喫煙が健康に与える影響とは?〜知っておきたいリスクと改善への一歩〜
執筆者:シンクヘルスクリニック院長 産婦人科医専門医 大村 美穂
目次
1 喫煙がもたらすおもな健康リスクとは?
1.1 肺疾患
1.2 心血管疾患
1.3 消化器疾患煙
1.4 悪性腫瘍煙
1.5 糖尿病
1.6 不妊症
2 他人への健康の影響~受動喫煙~
2.1 受動喫煙によるリスク
3 タバコの煙に含まれる化学物質の影響
4 喫煙がもたらす健康改善のメリット
5 禁煙を成功させるためには?
6 まとめ
喫煙は、世界中で最も広く認識されている健康リスクの一つです。多くの研究より、タバコの煙に含まれる有害物質が身体に深刻な影響を及ぼすことが明らかになっています。
また、喫煙による健康への影響について、どれほど詳しくご存じでしょうか?今回は、禁煙が引き起こす代表的な健康問題やそのメカニズムをわかりやすく解説します。
喫煙は、肺がんや心疾患をはじめとする多くの健康問題のおもな原因とされています。タバコの煙に含まれる有害物質は、肺や心血管系、免疫系に影響を及ぼします。とくに、以下のリスクが代表的です。
喫煙の最もよく知られた影響は、肺へのダメージです。タバコの煙には、発癌性物質や有害な化学物質が多く含まれており、これらは肺がん、慢性閉塞性肺疾患、肺炎などを引き起こします。
とくに、肺がんは喫煙者において最も一般的ながんの一つであり、喫煙が原因となるがんの約85%を占めているのです。
喫煙は心血管系にも深刻な影響を及ぼします。タバコの煙は血管に損傷を与え、動脈硬化を促進させることがあります。動脈硬化が進むと、心筋梗塞・脳卒中・末梢動脈疾患など、さまざまな心血管疾患のリスクが高まるのです。
また、喫煙者は非喫煙者と比べて、心血管疾患にかかるリスクが2~4倍高いとされています。
タバコを吸うと、胃や腸においても悪影響をあたえる可能性があります。胃酸の分泌を増やし、胃潰瘍や逆流性食道炎のリスクを高めることが知られています。
また、喫煙は腸管内の血流を減らし、消化管機能を低下させるため、便秘なども引き起こすことがあるのです。
肺がんをはじめ、タバコはさまざまながんの原因となります。
以下はおもながんです。
・食道がん
・口腔がん
・膀胱がん
・胃がん
・肝がん
・腎臓がん
喫煙ががんを引き起こすメカニズムは、タバコの煙に含まれる発がん物質がDNAに損傷を与えることにあるのです。
タバコを吸うことが、糖尿病のリスクを高める要因の一つであることをご存じですか?
喫煙はインスリンの効果を弱め、血糖値を高く保つ原因となるため、2型糖尿病の発症リスクを大幅に引き上げます。実際、喫煙者は非喫煙者と比べて糖尿病の発症率が30%以上高いとされているのです。
喫煙は男女ともに生殖能力に悪影響を及ぼします。男性では精子の質が低下し、女性では排卵の問題や早期閉経のリスクが高まります。
また、妊娠しにくくなるだけでなく、流産や早産の可能性も高まるといわれているのです。
受動喫煙とは、自分がタバコを吸わなくても、周りの喫煙者が発生させるタバコの煙を吸い込んでしまうことを指します。この煙は、喫煙者が吸い込む「主流煙」だけでなく、タバコの先端から直接出る「副流煙」も含まれます。
とくに、副流煙には主流煙よりも多くの有害物質が含まれており、健康への影響が深刻です。
日本では、受動喫煙が原因で年間約1万5千人が命を落としていると推定されています。とくに、肺がん・虚血性心疾患・脳卒中・乳幼児突然死症候群(SIDS)の4つの疾患との関連が明らかになっており、その健康への影響は非常に深刻です。
そして、これまでに多くの研究が行われ、その結果を統合した分析によると、受動喫煙によるリスクとして次のような結果が示されています。
・肺がんのリスクが1.28倍(28%増加)
・虚血性心疾患のリスクが1.3倍(30%増加)
・脳卒中のリスクが1.24倍(24%増加)
受動喫煙が周囲に迷惑をかけるだけでなく、重大な健康リスクを引き起こす可能性が高いことを明らかにしています。
タバコの煙には約4,000種類もの化学物質が含まれており、そのうち200種類以上が有害物質であることが知られているのです。有害物質は、次の4種類に大別されます。
・ニコチン :依存性を引き起こし、禁煙を困難にする主要な成分です。
・タール :肺の組織にダメージを与え、がんの原因となる物質です。
・一酸化炭素:血液中の酸素供給を妨げ、心臓に負担をかけます。
・微細粒子:刺激によりたんや咳を引き起こします。
これらの有害物質は、喫煙者自身だけでなく、周囲の非喫煙者にも悪影響を及ぼすことがあります。
長年吸っているとタバコをやめることが難しい方も多いのではないでしょうか?
しかし、喫煙をやめることで、身体にはすぐに良い変化が現れ始めます。
以下、禁煙後の主なメリットです。
・20分後:血圧と脈拍数が安定し、正常な状態に戻ります。
・24時間後:心臓発作のリスクが低下し始めます。
・数日後:味覚や嗅覚が鋭くなり、改善が実感できます。
・1ヶ月:咳や喘息などの呼吸器症状が軽減されます。
・1年後:肺機能の回復が見込めます。
禁煙を成功させるためには、医師による薬物療法(ニコチン離脱症状の緩和)が有効です。個々に合わせた適切な薬の処方を行い、副作用や離脱症状に対する対処も可能です。
また、薬物療法と禁煙カウンセリングを組み合わせて行うことで、それぞれの単独の実施に比べて効果が高い(単独の場合に比べて禁煙率1.4~1.7倍)といわれています。
当院の禁煙外来は、薬物療法だけでなく、臨床心理士によるチャット支援やオプションで禁煙についての相談も可能です。
以上、禁煙が引き起こす代表的な健康問題やそのメカニズムについて解説しました。
喫煙は健康に多大な悪影響を与え、様々な病気のリスクを高めます。
また、禁煙は全ての喫煙関連疾患の予防において最も効果的な方法です。禁煙後、心血管系のリスクが減少するといわれています。
そして、禁煙には薬物療法(ニコチンパッチやニコチンガム)が有効であり、心理的なサポートも禁煙を成功させるための重要な手段です。
禁煙外来などのサポートを受けつつ、禁煙に挑戦してみましょう。
それでは、本記事が喫煙している方にとって、健康を意識するのに役立つと幸いです。
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