【医師監修】妊婦がぎっくり腰になったらどうする?湿布や薬の注意点と、動けない時の対処法
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シンクヘルスクリニック 院長
岩佐美穂
資格(産婦人科専門医、日本抗加齢医学専門医、がん治療認定医)
所属学会(日本産科婦人科学会、日本成人病(生活習慣病)学会、日本抗加齢医学会、日本癌治療学会)
日本赤十字社医療センター、虎の門病院で産婦人科医として臨床経験を積む。「忙しい女性がもっと気楽に相談できる場所を作りたい」との想いを胸に、2024年11月、オンライン診療専門のシンクヘルスクリニックを開院。
婦人科(生理痛・更年期)、皮膚科、医療用漢方など、女性ならではの悩みに幅広く対応。心のケアも大切に、一人ひとりが安心して自分の体と向き合えるようサポートしている。
目次
1 妊娠中にぎっくり腰になりやすい2つの原因
1.1 ① ホルモンによる骨盤・関節の緩み
1.2 ② お腹が大きくなることによる重心の変化
1.3 逆効果!絶対にやってはいけない3つの行動
2 妊婦の湿布選び:使っていい薬・ダメな薬
2.1 市販の「ロキソニンテープ」は原則禁忌
2.2 妊娠中でも比較的安全に使用できる成分
3 産婦人科?整形外科?受診の判断基準
3.1 【最優先】まずは「かかりつけの産婦人科」へ
3.2 【次に】産婦人科の許可を得て「整形外科」へ
3.3 【極限状態】動けない時は「#7119」を活用
4 動けない時に痛みを和らげる「安全な体勢」
4.1 おすすめ:横向きで寝る「シムスの体勢」
4.2 仰向け:膝の下に高いクッションを入れる
5 まとめ:受診後の薬の相談にはオンライン診療も活用できます
「突然、腰に激痛が走って一歩も動けない」
「お腹の赤ちゃんに影響はない?」
「湿布を貼っても大丈夫?産婦人科と整形外科、どちらに連絡すればいいの?」
妊娠中、とくに自宅に一人でいる時や、上のお子さんのお世話をしている最中に腰が動かなくなると、不安でいっぱいになりますよね。
実は私自身も妊娠中に2回もぎっくり腰を経験しました。動けなくてとても辛かったです。
妊娠中の急な腰痛は決して珍しいことではありません。まずは無理に動こうとせず、いちばん楽な姿勢をとりましょう。
ただし、腰痛に見えても、切迫早産など妊娠に関連する症状が隠れていることがあります。また、妊娠中は使用を避けるべき湿布や鎮痛薬もあるため、自己判断で薬を使わないことが大切です。
この記事では、産婦人科専門医が以下についてわかりやすく解説します。
・妊娠中の湿布・痛み止めの注意点
・産婦人科と整形外科のどちらを受診するべきか
・すぐに医療機関へ連絡したい危険な症状
今まさに痛みで困っている方は、まず「動けない時に痛みを和らげる安全な体勢」からお読みください。
| 妊娠中にぎっくり腰になりやすい2つの原因
ぎっくり腰になってしまうと、「変な動き方をしてしまったから」「運動不足だから」と自分を責めてしまうこともあるかもしれませんが、妊婦さんはもともとぎっくり腰になりやすい状態なのです。
そもそも、一般に「ぎっくり腰」と呼ばれる状態は、急に生じた強い腰痛の総称です。筋肉や関節などが関係すると考えられますが、原因を絞り込めないことも多々あります。
妊娠中は、ホルモンの変化やお腹が大きくなることによって、腰や骨盤に負担がかかりやすくなります。物を持ち上げた時だけでなく、寝返りや立ち上がり、上のお子さんを抱き上げた瞬間など、日常の何気ない動作がきっかけになることもあります。
実際に私も椅子から立ち上がった時にぎっくり腰になりました。
| ① ホルモンによる骨盤・関節の緩み
妊娠すると、出産に向けて骨盤周辺の靱帯や関節に変化が起こります。その一因となるのが「リラキシン」などのホルモンです。
骨盤周辺の組織が柔軟になることは、出産に必要な体の変化です。一方で、関節を支える力が変化するため、腰や骨盤周辺の筋肉に負担が集中しやすくなります。
ただし、妊娠中の腰痛をリラキシンだけで説明できるわけではありません。姿勢、筋力、過去の腰痛、仕事や育児による負担など、複数の要因が重なって発症すると考えられます。
| ② お腹が大きくなることによる重心の変化
妊娠週数が進んでお腹が前にせり出すと、体の重心も前方へ移動します。バランスを取るために上半身を後ろへ反らせる姿勢になり、腰の筋肉や関節に負担がかかりやすくなります。
さらに、妊娠中は次のような動作も腰への負担になります。
・上のお子さんを抱き上げる
・中腰で着替えやオムツ替えをする
・重い買い物袋を持つ
・同じ姿勢で長時間座り続ける
腰に負担がたまっているところへ急な動作が加わり、強い痛みが出ることがあります。
| 逆効果!絶対にやってはいけない3つの行動

腰が痛いと「伸ばせば治る」「揉めばほぐれる」と考えがちですが、激痛がある直後に無理をすると、かえって痛みが強くなることがあります。
1.痛みを我慢してストレッチする
強い痛みがある時に、腰を大きくひねったり、無理に前屈したりする必要はありません。痛みが増す動作は中止し、まずは楽な姿勢で休みましょう。
2.痛い場所を強く揉む
強いマッサージや指圧は、痛みを悪化させる可能性があります。とくに原因がはっきりしない段階では、家族などに強く揉んでもらうことは避けてください。
3.長時間、熱いお風呂に入る
急性腰痛では「必ず冷やす」「温めてはいけない」と一律にはいえません。冷やす方が楽な人も、軽く温める方が楽な人もいます。
ただし、妊娠中に無理をして浴槽へ移動したり、熱いお湯に長く入ったりすると、転倒やのぼせにつながります。動けないほど痛い時は入浴を控え、保冷剤を布で包んで短時間当てるなど、負担の少ない方法を試してください。冷やして痛みが増す場合は中止しましょう。
| 妊婦の湿布選び:使っていい薬・ダメな薬
「飲み薬ではなく湿布なら、赤ちゃんへの影響はないだろう」と思う方もいるかもしれません。
しかし、湿布の成分も皮膚から体内へ吸収されます。商品や妊娠週数によって注意点が異なるため、妊娠前にもらった湿布や家族の湿布を自己判断で使わないでください。
| 市販の「ロキソニンテープ」は原則禁忌
ロキソニンテープの有効成分であるロキソプロフェンは、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)に分類されます。
NSAIDsには胎児の動脈管を収縮させる可能性があり、近年は妊娠中期以降の使用についても注意喚起されています。また、内服薬などでは胎児の腎機能低下や、それに伴う羊水過少症も報告されています。
ロキソプロフェンの貼付剤は「妊娠中すべてで絶対に使用できない」という位置づけではありません。ただし、妊婦への使用は医師が治療上の利益とリスクを判断した場合に限られます。
また、ケトプロフェンを含む一部の湿布・外用薬は、妊娠後期には使用できません。実際に胎児の動脈管収縮などが報告されています。
そのため、妊娠中は市販品を含め、次の成分が入った湿布や鎮痛薬を自己判断で使用しないことが大切です。
・ケトプロフェン
・ジクロフェナク
・インドメタシン
・フェルビナク
すでに一度貼ってしまった場合も、すぐに深刻な影響が起こると決まったわけではありません。使用した商品名、枚数、貼っていた時間、妊娠週数を確認し、かかりつけの産婦人科へ相談しましょう。
| 妊娠中でも比較的安全に使用できる成分
妊娠中に鎮痛薬が必要な場合、一般的にはアセトアミノフェンが選択肢になります。カロナールなどが代表的です。
ただし、妊娠中であれば無条件に安全という意味ではありません。妊娠週数、持病、ほかに服用している薬などを確認し、必要な量を必要な期間だけ使用します。
湿布についても「妊婦ならこの商品が一律に安全」とは判断できません。商品名や成分を確認したうえで、医師に選んでもらうことをおすすめします。
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妊娠中の頭痛…薬は我慢すべき?産婦人科医が教える安心の対処法と、自宅からできる相談の選択肢(近日公開予定)
| 産婦人科?整形外科?受診の判断基準
妊娠中に急な腰痛が起きたら、基本的には次の順番で相談します。
・産婦人科の指示に応じて整形外科を受診する
・緊急性の判断に迷ったら、対応地域では#7119へ相談する
ただし、出血や規則的なお腹の張りなどがある場合は、最初から産婦人科へ緊急連絡してください。
| 【最優先】まずは「かかりつけの産婦人科」へ
本人にはぎっくり腰と思えても、腰や下腹部の痛みが子宮収縮、切迫早産、常位胎盤早期剝離などに伴って起こる可能性があります。
電話では、次の内容を伝えましょう。
・痛みが始まった時間ときっかけ
・痛む場所と強さ
・お腹の張りの有無
・性器出血や破水感の有無
・発熱、吐き気、排尿時痛の有無
・胎動を感じる週数であれば、胎動の変化
・足のしびれや力の入りにくさ
・使用した薬や湿布の名前
妊娠経過を把握している産婦人科へ最初に相談することで、産科的な異常の可能性と、使用できる薬の両方を確認できます。
| 【次に】産婦人科の許可を得て「整形外科」へ
産婦人科で妊娠に関する緊急性が低いと判断されたら、整形外科の受診を検討します。
受診前に「妊娠中でも診察可能か」を電話で確認し、受付では必ず妊娠中であることと妊娠週数を伝えてください。必要に応じて診察や画像検査を行い、腰の筋肉や関節、椎間板、神経などの状態を評価します。
妊娠中でも、必要性がある検査まで一律に避ける必要はありません。検査の利益とリスクを医師が検討するため、妊娠を理由に受診そのものを我慢しないでください。
| 【極限状態】動けない時は「#7119」を活用
「一人で動けない」「上の子がいて病院へ行けない」「救急車を呼ぶべきかわからない」という場合は、対応地域であれば救急安心センター「#7119」へ相談できます。
#7119では、医師・看護師・救急救命士などから、救急車が必要か、いつ・どの医療機関を受診するべきかについて助言を受けられます。ただし全国共通で利用できるわけではないため、事前に居住地域の対応状況をご確認ください。
次の症状がある場合は、#7119を待たずに、かかりつけの産婦人科への緊急連絡または119番通報を検討してください。
・規則的なお腹の張りや痛みが続く
・意識が遠のく、冷や汗が出る、息苦しい
・転倒や事故のあとから強く痛む
・発熱を伴う激しい腰痛がある
・両脚に力が入らない、しびれが急に悪化した
・股の周囲の感覚が鈍い
・尿が出ない、尿や便を漏らすようになった
股周辺の感覚低下や排尿・排便の異常は、まれですが馬尾症候群など緊急治療を要する状態のサインになることがあります。
| 動けない時に痛みを和らげる「安全な体勢」
激痛がある時は、無理に正しい姿勢を作る必要はありません。まずは「いちばん痛みが少ない姿勢」を探してください。
息を止めて力むと体がこわばりやすいため、ゆっくり息を吐きながら少しずつ体勢を変えます。痛みが強くなる動きは中止しましょう。
| おすすめ:横向きで寝る「シムスの体勢」
妊娠中は、横向きの姿勢が比較的とりやすいでしょう。
・両膝を軽く曲げる
・膝と膝の間にクッションや抱き枕を挟む
・お腹の下や背中側にもタオルを入れ、楽な位置に調整する
「痛む側を必ず上にする」などの決まりはありません。左右を試し、楽な方を選んでください。
起き上がる時は、横向きのまま脚をベッドの外へ下ろし、腕で上半身を支えると、腰をひねりにくくなります。
| 仰向け:膝の下に高いクッションを入れる
妊娠初期などで仰向けが楽な場合は、膝の下に高めのクッションや丸めた布団を入れてみましょう。膝が軽く曲がることで腰の反りが減り、痛みが和らぐことがあります。
ただし、妊娠中期以降に仰向けで気分が悪くなる、息苦しい、冷や汗が出るといった場合は、すぐに横向きへ戻してください。大きくなった子宮が太い血管を圧迫している可能性があります。
| まとめ:受診後の薬の相談にはオンライン診療も活用できます
妊娠中のぎっくり腰は、ホルモンや姿勢の変化によって誰にでも起こる可能性があります。痛みを我慢して家事や育児を続けたり、無理なストレッチで自力で治そうとしたりする必要はありません。
大切なポイントは次の3つです。
・市販の湿布や痛み止めを自己判断で使用しない
・まずはかかりつけの産婦人科へ連絡し、必要に応じて整形外科を受診する
出血、破水感、規則的なお腹の張り、胎動の明らかな減少、脚の麻痺、排尿・排便の異常などがある場合は、単なるぎっくり腰と決めつけず、速やかにかかりつけの産婦人科や救急医療機関へ連絡してください。
一方で、産婦人科や整形外科を受診した後に、
・処方された薬を妊娠中に使用してよいか確認したい
・市販薬や湿布を使ってよいか相談したい
・痛みが残っており、追加の薬について相談したい
といった場合は、オンライン診療を活用することもできます。
当院では、妊娠週数や症状、受診結果、現在使用している薬などを確認したうえで、妊娠中に使用できる薬についてオンラインでご相談いただけます。診察の結果、医師が必要と判断した場合には、痛み止めなどの処方も可能です。
処方されたお薬は自宅にお届けすることができるものもあるため、一切外出せずにお薬を受け取ることもできます。
「もう一度病院へ行くのが難しい」「上の子がいて外出しにくい」という時も、一人で我慢せずご相談ください。
※オンライン診療は、産婦人科や整形外科での診察・検査に代わるものではありません。強い痛みが続く場合や緊急性が疑われる症状がある場合は、オンライン診療を待たず、かかりつけの産婦人科または救急医療機関を受診してください。
参考文献
・厚生労働省.「ケトプロフェン外皮用剤の妊娠中における使用について」医薬品・医療機器等安全性情報 No.312
厚生労働省安全性情報
・U.S. Food and Drug Administration. “FDA recommends avoiding use of NSAIDs in pregnancy at 20 weeks or later because they can result in low amniotic fluid.” 2020.
FDA Drug Safety Communication
・Shah S, et al. Pain Management in Pregnancy: Multimodal Approaches. Pain Research and Treatment. 2015;2015:987483.
PubMed Central
・Newcastle Hospitals NHS Foundation Trust. “Back and pelvic pain in pregnancy.”
Newcastle Hospitals NHS

