性感染症(STD)について知っておくべきこと、自分で検査できるってほんと?

執筆者:シンクヘルスクリニック院長 産婦人科専門医 大村 美穂
目次
1.1 クラミジア感染症 2022年の感染者数:約20,000件
1.2 淋菌感染症(淋病)2022年の感染者数:約8,000件
1.3 梅毒 2024年の感染者数(東京都):3,760件(過去最高)
1.4 尖圭コンジローマ 2022年の感染者数:約5,000件
1.6 HIV(ヒト免疫不全ウイルス)2022年の新規HIV感染者数:約1,000件、エイズ患者数:約400件
性感染症(STD: Sexually Transmitted Diseases)は、性行為を介して感染する疾患の総称です。
近年、性感染症の発症率が増加傾向にあり、正しい知識と予防策が重要視されています。本コラムでは、主要な性感染症の種類、症状、予防、検査方法について解説します。
性感染症にはさまざまな種類がありますが、今回は発生頻度の高い代表的なものを6つお伝えします。
| クラミジア感染症 2022年の感染者数:約20,000件
日本で最も多い性感染症の一つです。とくに女性は症状が出ないことも多く、無症状で自身が感染していることを認識せずに性交渉をして、パートナーへ感染を広げてしまうため注意が必要です。
また女性では、クラミジア感染症によって卵管がつまってしまい、不妊の原因となることもあります。オーラルセックスによって、喉に感染する場合もあります。
検査方法は血液検査の他に、尿やうがい液の中にクラミジアがいるかどうかで判定が可能です。女性の場合は頸管粘液を採取して調べることもあります。
オンライン診療で検査キットをお送りしてご自身で調べることが可能な施設もあります。治療が必要になった場合もオンライン診療でお薬の処方が可能です。
男性では尿道炎を、女性では子宮頸管炎を引き起こすことが多いです。
男性の尿道炎の場合は排尿時の違和感・かゆみ・痛み、頻尿、尿道から分泌物や膿が出るなどの症状があります。
症状は尿道の出口に現れることもありますし、奥の部分に感じることもある一方で、まったく症状が出ない場合もあります。
女性の頸管炎は「おりものが多い」などの症状もありますが、基本的には無症状のことが多いです。淋菌感染症によって不妊や、お腹が痛くなる骨盤内感染症の原因にもなるため注意しましょう。
また淋菌の特徴として、クラミジアと同時に感染している場合が多いです。
検査方法はクラミジアと同様に尿やうがい液で行い、女性の場合は頸管粘液を採取して調べることもあります。
オンラインで検査キットをお送りしてご自身で調べることが可能な施設もありますが、治療が必要になった場合は点滴での治療が必要になるため、お近くのクリニックの受診が必要です。
| 梅毒 2024年の感染者数(東京都):3,760件(過去最高)
最近、再流行している性感染症の一つです。初期にはしこりや潰瘍ができ、進行すると皮膚や内臓に影響を及ぼします。
妊娠中に感染すると赤ちゃんにも影響することがあるため、注意が必要です。
検査方法は血液検査です。
尖圭コンジローマは、HPV(Human Papillomavirus:ヒトパピローマウイルス)によって引き起こされる感染症です。
HPVは子宮頸がんの主な原因となるウイルスとして有名ですが、HPVにはさまざまな種類があり、子宮頸がんを引き起こすものもあれば、一部の型は尖圭コンジローマの原因になります。
尖圭コンジローマの症状は白っぽいぶつぶつしたできものが特徴で、以下のような場所に出現します。
女性:腟、腟前庭、大小陰唇、子宮口
男女共通:肛門及び周辺部、尿道口
尖圭コンジローマは一部組織を切除して検査をすることもありますが、婦人科医師が目でみて診断することもあります。
単純ヘルペスウイルス(HSV)が原因で、痛みを伴う水疱や潰瘍が生じます。
一度感染してしまうと、自身の免疫力が低下したときなどに再発しやすいのが特徴です。再発を繰り返してしまう場合は再発抑制療法という治療法があります。お悩みの方はオンラインクリニックでもご相談が可能です。
検査方法は綿棒で潰瘍の部分をこする方法もありますが、婦人科医師が目でみて診断することもあります。
| HIV(ヒト免疫不全ウイルス)2022年の新規HIV感染者数:約1,000件、エイズ患者数:約400件
エイズ(後天性免疫不全症候群)の原因となるウイルスです。
初期は無症状のことが多く、進行すると免疫機能が低下し、様々な感染症やがんのリスクが高まります。
性感染症の症状は疾患ごとに異なりますが、一般的な症状として以下が挙げられます。
・性器のかゆみ、異常な分泌物
・性器や口腔内のしこり、潰瘍
・発熱や倦怠感
・性行為後の異常出血
無症状の場合も多いため、定期的な検査が推奨されます。
性感染症にならないためには予防が重要です。普段から意識することでできる予防法を4つご紹介します。
性行為時に正しくコンドームを使用することで、多くの性感染症を予防できます。
無症状でも感染している可能性があるため、定期的な検査が重要です。
とくに複数のパートナーがいる場合や、新しいパートナーと関係を持つ前には検査を推奨します。
子宮頸がんを予防するために、HPVワクチンの接種が推奨されています。男女ともに受けることが可能です。
HPVワクチンの種類によっては尖圭コンジローマの原因になるHPVも予防できるものがあります。
性感染症の正しい知識を持つことが、予防につながります。
パートナーとのオープンなコミュニケーションも大切です。
性感染症は誰にでも感染する可能性があり、無症状のまま進行することも多いため、予防と早期発見が重要です。
安全な性行為を心がけ、定期的な検査を受けることで、自分とパートナーの健康を守りましょう。
性感染症について不安がある場合は、医療機関での相談や検査をおすすめします。当院ではご相談のみの場合でも承っています。お気軽にご相談ください。
参考文献