糖尿病で体重が減るのはなぜ?食べても痩せる理由や対策を医師が解説
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日本赤十字社医療センター、虎の門病院で産婦人科医として臨床経験を積む。「忙しく頑張っている人がもっと気楽に相談できる場所を作りたい」との想いを胸に、2024年11月、オンライン診療専門のシンクヘルスクリニックを開院。
内科、皮膚科、医療用漢方、婦人科など、受診者の悩みに幅広く対応。心のケアも大切に、一人ひとりが安心して自分の体と向き合えるようサポートしている。
目次
1 「食べてるのに痩せる」と感じたら、まずすべきこと
1.1 毎日の体重を一定条件で測定・記録する
1.2 食事・運動・睡眠の詳細ログを残す
2 :糖尿病の初期相談もオンラインで対応可能
2.1オンライン診療の手軽さと利用方法
2.2対面との連携も可能
3 糖尿病で体重が減るメカニズムとは?
3.1インスリン不足によるエネルギー飢餓
3.2 糖新生とケトン体生成の加速
4 どのくらい減ったら危険?受診の目安
4.11~2か月で3%の体重減少
4.2 口渇・多飲・多尿の併発
5 まとめ
最近、運動やダイエットもしていないのに体重が減ってきて、「放っておいて大丈夫?」と不安に感じていませんか。
糖尿病の初期症状として「食べても痩せる」現象が起こることがあり、そのまま放置すると合併症リスクが高まります。
本記事では、まず行うべきセルフチェック方法からオンライン診療の活用法、体重減少のメカニズム、受診の目安までをわかりやすく解説します。ぜひ最後までご覧ください。
| 「食べてるのに痩せる」と感じたら、まずすべきこと
食事量や生活習慣が変わっていないのに体重だけが減少している場合、身体が何らかの異常を訴えているサインかもしれません。
自己判断で放置せず、まずは客観的なデータを集めて現状を把握することが大切です。
| 毎日の体重を一定条件で測定・記録する

朝起きてトイレを済ませた直後、食事や運動を行う前など、毎日同じタイミングで体重を測定し、記録アプリやノートに記録します。このように条件をそろえて計測することで、日々の変動が正確に比較できます。
短期間では前日の食事や水分摂取量でも変動するため、少なくとも2週間は続けて記録し、週単位での増減を確認しましょう。可能であれば、体組成計を使って体脂肪率や筋肉量もあわせて記録すると、脂肪と筋肉のどちらが減っているのかがわかりやすくなります。
記録は手書きでもスマホアプリでも構いませんが、グラフ表示できる形式にしておくと、増減の傾向や急激な変化が一目で把握できます。これらの記録は医師に相談する際の貴重な資料となり、原因特定や治療方針の決定にも役立つのです。
| 食事・運動・睡眠の詳細ログを残す
体重とあわせて以下の項目も記録することがおすすめです。
・運動内容(種類・時間・強度)
・睡眠時間や質(起床・就寝時間、夜間の覚醒回数)
・ストレス状況
これらを詳細に記録することで、単なる糖代謝異常以外の要因(過労やストレス、睡眠不足など)が体重減少に関与しているかを判別できます。
たとえば、「会議が続く繁忙期に体重が急激に減った」など、環境要因と数値が結びつくと、対策の優先順位が明確になります。
| 糖尿病の初期相談もオンラインで対応可能
働き盛りのビジネスパーソンにとって通院の時間確保は大きな負担ですが、最近ではオンライン診療で糖尿病の初期相談から、フォローアップまで対応可能です。
| オンライン診療の手軽さと利用方法
まず、クリニックのウェブサイトや診療アプリから予約を行い、指定の日時にスマートフォンやパソコンでビデオ通話に接続します。
問診票は、事前にオンラインで入力できることが多いです。体重・血糖値の記録や健康診断結果をデータアップロードするだけで、問診がスムーズに進みます。
初回相談では医師が症状や生活習慣をヒアリングし、必要に応じてお薬の処方も行われます。
オンライン診療は移動時間・待ち時間がゼロになるため、仕事の合間や自宅で家事をしながらでも受診可能です。家族の介助が必要な場合や、外出が難しい体調の時にも活用できます。
| 対面診療の医療機関紹介も可能
採血や詳しい検査が必要になった場合には、患者様の最寄りや通いやすい医療機関を紹介することも可能なため、、対面診療とのハイブリッド利用が可能です。
これにより、初期段階で診断を受けた後も、負担なく治療を継続できます。
| 糖尿病で体重が減るメカニズムとは?
糖尿病ではインスリン不足や作用低下によって血中のブドウ糖が細胞に取り込まれず、エネルギー代謝がうまくいかなくなります。
その結果、体は不足分を補うために筋肉や脂肪を分解してしまいます。
| インスリン不足によるエネルギー飢餓

インスリンは食後に血糖を細胞内へ取り込む役割を担っていますが、分泌量が足りなかったり、細胞側の反応が鈍くなったりすると、筋肉や脂肪細胞にブドウ糖が届きません。
すると、体は「エネルギー飢餓状態」と判断し、体内のエネルギー貯蔵庫である脂肪や筋肉を分解して補充しようとします。この過程で体脂肪が減り、筋肉量も減少するため、体重が落ちやすくなります。
| 糖新生とケトン体生成の加速
エネルギー不足を補うため、肝臓や腎臓ではアミノ酸を原料にグルコースを合成する「糖新生」が活性になります。この過程で筋肉中のアミノ酸が大量に消費され、筋肉量の減少を招きます。さらにブドウ糖が不足すると、体は脂肪を分解して「ケトン体」という代わりのエネルギー源を作り出すのです。
ケトン体は一時的には一時的にはエネルギー源として役立ちますが、過剰に作られると「ケトアシドーシス」という危険な状態を引き起こすことがあります。
ケトアシドーシスでは吐き気・嘔吐・強い口の渇き・呼吸が荒くなる・意識がもうろうとするなどの症状が現れることがあり、命に関わる場合も。
このような症状が見られた場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。
| どのくらい減ったら危険?受診の目安
体重は一時的な水分の変動や運動強度の差でも変化しますが、明らかに病的と判断できるポイントがあります。
自己判断せず、適切なタイミングで受診を検討しましょう。
| 1~2か月で3%の体重減少
一般的に、1~2か月で体重の3%以上が減少すると、何らかの病的要因が関与している可能性が高いと言われます。
たとえば70kgの方なら、1か月で約2kg、2か月で4kgの減少が目安です。これ以上の急激な減少は、糖尿病だけでなく、他の病気の可能性も含め、早めの受診が勧められます。
| 口渇・多飲・多尿の併発

糖尿病の典型的な初期症状として、「口が渇く」「水をたくさん飲む」「尿の回数が増える」などの症状が現れることがあります。高血糖により余分な糖分を尿として排出しようとして、尿量が増加し、結果として水分補給が増えるのです。
このサイクルが続くと脱水や疲労感が強まり、体重減少がさらに加速します。これらが同時に現れた場合は、一刻も早く医療機関を受診しましょう。
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| まとめ
「食べているのに痩せる」現象は、糖尿病をはじめとした重大な健康リスクのサインである可能性があります。まずは毎日の体重と生活の記録をつけて原因を探ってみましょう。
受診すべきか迷う場合もオンライン診療を活用すれば、通院の負担なく早期に相談が可能です。一人で悩まず、どうぞお気軽にご相談くださいね。
参考文献
厚生労働省「糖尿病の現状と対策」
公益社団法人 日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイドライン 2023」
国立健康・栄養研究所「糖質の代謝と健康」



