生活習慣病とはどんな病気？種類や原因・予防法も解説
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執筆者
シンクヘルスクリニック 院長
産婦人科専門医 岩佐美穂
目次
1 生活習慣病とは
1.1 生活習慣病の定義
1.2 生活習慣病と成人病との違い
2 生活習慣病罹患ランキング
3 生活習慣病の種類
3.1 循環器病
3.2 大腸がん・肺がん
3.3 2型糖尿病
3.4 高血圧症
3.5 アルコール性肝疾患
3.6 高尿酸血症
3.7 肥満
3.8 脂質異常症
3.9 COPD（慢性閉塞性肺疾患）
3.10 歯周病
4 生活習慣病の主な原因
4.1 食生活の乱れ
4.2 運動不足
4.3 過度な飲酒
4.4 喫煙
4.5 ストレスのためすぎ
4.6 睡眠不足
5 生活習慣病を予防するために気をつけること
5.1 無煙（一無）
5.2 少食・少酒（二少）
5.3 多動・多休・多接（三多）
5.4 生活習慣病予防健診を受ける
6 まとめ
生活習慣病は、よく耳にする言葉ですが、どんな病気があるのか、何に気をつければよいのかはあまり知られていないかもしれません。
生活習慣が原因で起こる病気には、さまざまな種類があり、原因もひとつではないですが、日常生活に注意して過ごせば、予防や進行を防げられる可能性は高まります。
この記事では、生活習慣病の罹患ランキングや種類、原因を詳しく解説します。
生活習慣病を知り、予防するために参考にしてみてください。
生活習慣病とは、どのような病気のことを指すのかご存じでしょうか？
ここでは、生活習慣病についての基本を解説します。
生活習慣病とは、厚生労働省の「健康づくりサポートネット」で、以下のように定義されています。
『食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒など生活習慣が、発症・進行に関与する疾患群』
毎日の生活習慣により少しずつ病気の種が積み重なり、自覚症状が乏しく、気づかないうちに病気になっていた、という方も少なくありません。
ただし、遺伝的要因や社会環境要因などの複数の要因が影響するともされており、必ずしも生活習慣の乱れだけが原因とは言い切れないため、配慮が必要です。
生活習慣病という概念は、1996年頃から使われるようになった比較的新しい言葉です。
それ以前は成人病と呼ばれていましたが、成人でなくても発症する可能性があることがわかりました。
成人病は、生活習慣の乱れが原因となって、加齢によって脳卒中、がん、心臓病などが発症すると考えられていましたが、若年でも発症することもあるため、生活習慣病と呼ばれるようになりました。
また、発症してからの早期発見や早期治療などの対策を立てる「二次予防」が主だったのが、成人病です。
一方、生活習慣病は、二次予防に加えて、生活習慣を改善して病気の予防を対策する「一次予防」に重点を置く考えを推進し、病気になる前に健康を保つべく導入された概念です。
現時点での生活習慣病の罹患数は、厚生労働省の調査によると以下の通りです。
| 疾患名 | 患者数 |
|---|---|
| 高血圧性疾患 | 994万人 |
| 歯周炎及び歯周疾患 | 398万人 |
| 糖尿病 | 329万人 |
| 脂質異常症 | 221万人 |
| 心疾患（高血圧性のものを除く） | 173万人 |
| 脳血管疾患 | 116万人 |
| がん（大腸がん・肺がん） | 46万人 |
| 慢性腎臓病 | 39万人 |
| 肝疾患 | 25万人 |
| 慢性閉塞性肺疾患 | 22万人 |
このうち、がんは大腸がんと肺がんのみの傷病数ですが、がん自体の総数は178万人です。
生活習慣病に分類される病気の罹患数は多く、複数の病気にかかっている方も珍しくありません。
また、生活習慣の乱れが身体の負担になり、深刻な病気につながってしまい健康寿命を縮めてしまう可能性もあります。
生活習慣病にはさまざまな種類があり、3大疾病（がん、心筋梗塞、脳卒中）や7大生活習慣病（がん、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、高血圧性疾患、慢性腎不全、肝硬変）などが挙げられます。
これ以外にも、生活習慣が要因となって発症する可能性がある病気も含めて、主な種類を解説します。
循環器病とは、心臓と血管に関係する病気のことで、心血管疾患や脳血管疾患が含まれます。
血管が詰まって心臓や脳に血液が流れなくなってしまい、組織が死んでしまう病気です。
心筋梗塞や狭心症、脳卒中、脳梗塞などは、動脈硬化が原因となります。
動脈硬化は、高血圧や糖尿病、脂質異常症があると進みやすくなります。これらの病気を予防することは、心筋梗塞や脳卒中を防ぐことにもつながります。
がんは遺伝子の障害により起こる病気で、誰でもなる可能性があり、「これをすれば予防できる」という明確な予防法はありません。
しかし、大腸がんと肺がんは、生活習慣に起因するケースが多く、リスクを減らすことが可能です。
大腸がんは飲酒や運動不足、ストレス、緑黄色野菜の不足などがリスク因子に挙げられています。
肺がんは喫煙が最もリスクとなりますが、肺扁平上皮がんという気管から気管支の内部を覆う細胞ががん化したタイプの肺がんは、喫煙以外にも大気汚染、受動喫煙、COPD（慢性閉塞性肺疾患）も関係します。
糖尿病には、自己免疫の異常により発症する1型糖尿病と、生活習慣や遺伝により発症する2型糖尿病があり、生活習慣病と関連があるのは2型糖尿病です。
2型糖尿病は、インスリンの分泌不足や、肥満などによるインスリン抵抗性（インスリンの作用が効きにくくなること）により、血糖値が適切に調節できずに高くなる病気です。
糖質の過剰摂取も、血糖値の上昇や病状の悪化に関与します。
初期はほとんど無自覚ですが、身体の中では高血糖が続いています。
血管にも負担がかかり、進行すると動脈硬化や腎症、神経障害、網膜症など、さまざまな病気のリスクが上がります。
生活習慣の改善や内服薬、注射薬の治療が必要となり、血糖値のコントロールが重要です。
高血圧症はさまざまな病気に影響する要因として、重要な症状です。
塩分のとりすぎや、肥満、喫煙、過度な飲酒、運動不足などから高血圧症を発症するケースが多くなっています。
高血圧症が進むと血管に負担がかかって動脈硬化が起こり、脳や心臓などの病気につながる恐れもあります。
過度なアルコール摂取を長期間続けていると肝臓に負担がかかり、細胞を破壊してアルコール性肝疾患を発症する可能性が高まります。
自覚症状がない場合も多く、肝臓の機能が失われていくと、肝硬変に進行してしまい、多くの肝臓細胞が機能しなくなってしまいます。
初期段階なら肝臓の機能が回復する可能性もあるため、過度な飲酒は控えましょう。
高尿酸血症とは、新陳代謝で発生する老廃物である「尿酸」が増えすぎている状態で、痛風や尿路結石、腎障害の原因になる病気です。
肥満や高血圧、脂質異常症、高血糖などの合併症が起こりやすく、脳卒中や心疾患リスクとの関係が指摘されています。
痛風や尿路結石は男性に多い病気ですが、閉経後の女性はホルモン分泌が低下するため、発生率がやや増加します。
体重が多く、BMIが25以上になると医学的に肥満と判定されます。
一般的に肥満だけでは治療の対象ではありませんが、肥満に関連し合併症が予測され減量が必要な状態になると、肥満症となり、治療が必要になります。
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脂質異常症とは、血液中の脂質値が基準値から外れた状態の病気です。
LDLコレステロール（悪玉コレステロール）やHDLコレステロール（善玉コレステロール）、中性脂肪の異常が見られ、動脈硬化の原因となる可能性があります。
間食が多いことや、運動不足はLDLコレステロールと中性脂肪の上昇につながります。
また、アルコールの過剰摂取は中性脂肪を上昇させます。
脂質異常症は、生活習慣の見直しで改善できるケースも少なくありません。
COPD（慢性閉塞性肺疾患）とは、肺気腫と慢性気管支炎を合わせたものとされていて、汚れた空気を長期間吸い続けたことが原因で発症するため、原因が同じ病気として名前が統一されています。
COPDは進行性の病気で、肺の内部破壊や気管支が狭くなったことにより、息苦しさや咳、たんが長く続く症状が現れます。
汚れた空気とは、大気汚染よりも喫煙によるものが大きく、過去の喫煙の影響も受けてしまい、COPDを発症した患者さんの多くは現在か過去の喫煙者です。
歯周病は、歯肉や骨が歯周病菌によって壊されて、歯がぐらついたり、抜け落ちたりする病気です。
歯周病は全身の炎症状態に影響し、動脈硬化やがんリスクとの関係を示唆する研究もあります。
定期的な歯科検診を受けて歯の健康を保つことが重要です。
また、糖尿病があると歯周病のリスクが上がるため、血糖値を良好に保つことも歯周病予防につながります。
生活習慣病の原因といってもひとつだけではなく、複数の要素が重なることもあります。
「健康的と言えない生活習慣」が原因とされているため、どのような生活習慣が病気につながる可能性があるのか知っておきましょう。
食生活の乱れは、生活習慣病にとって大きな原因となり、健康を保つためには重要な要素です。
さまざまな食材をバランス良く摂取する食事を心がけましょう。
塩分のとりすぎは高血圧症に影響しやすいですが、和食だと味噌、醤油などの調味料や、漬物で塩分の過剰摂取になることが多く、注意が必要です。
また、間食のとりすぎは糖尿病や脂質異常症につながる可能性があるため、なるべく量を控えたり、頻度を控えるようにしましょう。
運動不足は身体能力が衰えてしまうだけでなく、病気の原因にもなる可能性があります。
通勤・通学や買い物などの外出時に車を利用している方は、歩く機会が減ってしまうでしょう。
日常生活で身体を動かす習慣がないと、肥満から高血圧症や2型糖尿病などの病気になってしまうかもしれないため、運動不足の解消が非常に重要です。
過度な飲酒は、アルコール性肝疾患の主な原因です。
進行するとアルコール健康障害（依存症）を引き起こし、日常生活に影響を及ぼすほどの精神的、身体的な支障をきたし治療も難しくなります。
アルコール類の中には糖分が多く含まれているものもあり、過剰な摂取は肥満や糖尿病、高血圧症などの病気の原因になりかねないため、注意しましょう。
喫煙は、さまざまな病気にとって害になる可能性があります。
タバコに含まれるニコチンには依存性があり、副流煙には本人以外にも悪影響を及ぼす有害成分が含まれていて、血管収縮作用により血圧を上昇させたり、糖代謝に異常をきたしたりする恐れがあります。
タールには発がん物質や発がん促進物質が含まれ、肺がんリスクにつながります。
COPDや循環器病、歯周病などの病気のリスクも高まり、喫煙による生活習慣病の発症の可能性は大きいと言えるでしょう。
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ストレスは万病の元、と言われることもありますが、生活習慣病にとってもストレスのためすぎが原因になるケースがあります。
ストレスがたまって飲酒量や喫煙量が増えたり、食べ過ぎてしまったりした経験がある方も多いのではないでしょうか。
また、ストレスで日常生活に変化が起こる以外にも、ストレスを感じること自体が病気発症のきっかけになってしまう可能性もあります。
睡眠は健康的な生活に不可欠なため、不足するとさまざまな病気を引き起こす可能性が高まります。
睡眠不足は自律神経やホルモンバランスの乱れにつながり、肥満や高血圧、糖尿病などの原因になることもあります。
睡眠による疲労回復ができずに体調不良が続くと、感染症にかかりやすくなるリスクもあるため、健康的な生活のためにはしっかり睡眠を取ることが必要です。
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生活習慣病は、生活習慣に気をつけることで予防できるものも多く、進行を遅らせ健康寿命を長くするためにも、以下のようなことを意識して生活しましょう。
日本生活習慣病予防協会による、一無（いちむ）、二少（にしょう）、三多（さんた）という、日常心がけたい生活習慣をわかりやすく表現した健康標語と、予防健診について解説します。
一無とは、「無煙・禁煙のすすめ」です。
タバコには数多くの有害物質が含まれていて、喫煙者だけでなく周りにも受動喫煙により影響を与えてしまいます。
また、加熱式タバコや電子タバコは一部の有害物質の削減のみであり、発がんリスクがないとは言い切れません。
多くの生活習慣病のリスクを軽減できる可能性があるため、禁煙することで生活習慣病の予防や進行を防ぐ効果が期待できます。
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二少とは、「少食・少酒のすすめ」です。
暴飲暴食を控え、バランスの良い食事を腹八分目に留め、食後の急激な血糖値上昇を防ぐことで、2型糖尿病や脂質異常症、高血圧などの病気予防につながります。
一汁三菜が望ましく、適量の主食と果物、乳製品を加えて腹八分目の量を目指しましょう。
また、アルコールが生活習慣病に大きな影響を及ぼすことから、飲酒は純アルコールに換算して1日20gまでに留めましょう。
例えばビールは500ml缶以下、ハイボールは350ml缶以下が望ましい飲酒量です。
三多は「多動・多休・多接のすすめ」です。
多動とは、今より10分多く身体を動かして、活動量を増やすことをすすめています。
10分歩く、10分ストレッチを行うなど、意識するだけでも、身体能力の維持や運動量の増加に繋がります。
ウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動は、肥満解消の効果も期待できます。
多休は、しっかり休養して、心身のリフレッシュをするのが目標です。
個人差はありますが、1日6〜8時間の睡眠をとり、身体を休めましょう。
睡眠だけでなく、忙しい毎日の中でもリフレッシュできるように休日の過ごし方も見直してみてはいかがでしょうか。
また、多接とは多くの人や事、物に接してイキイキとした生活をすすめるものです。
社会や人とのつながりを大切にすることで、身体的や精神的な健康が期待できます。
好奇心をもってさまざまな物事に接する方は、年齢は関係なくイキイキと輝いていて、創造力豊かな生活を送っているのではないでしょうか。
通常の健康診断とは別に、生活習慣病予防健診を受けることで、どのような病気のリスクがあるのかを知ることができます。
全国健康保険協会（協会けんぽ）では、がん検診や血液検査などを含むさまざまな検査で、生活習慣病の予防や早期発見・早期治療をするのを目的としている検診を行っています。
非加盟者は費用はかかりますが、同様の検査内容を行える医療機関で検診を受けることができるため、問い合わせてみましょう。
ただし、生活習慣病予防健診は、受けた後にどうするかが重要です。
結果によっては再検査が必要だったり、改善の指導を受けたりして、生活習慣に反映させて病気の予防をするために活用してみてはいかがでしょうか？
生活習慣病とは、生活習慣の乱れによって少しずつ進行し、自覚症状があまりないのが特徴です。
気づいたときには病気が発症していたり、改善が難しかったりするかもしれません。
ひとつの病気だけでなく、複数の発症や合併症などの可能性もあるため、健康寿命を損ねる恐れがあります。
普段から食事や運動に気をつけ、禁煙やアルコールを控えるなど健康的な生活のための行動を意識して、生活習慣病を予防していきましょう。
当院では、オンライン禁煙外来で医療の力で禁煙をサポートしております。
治療中に困ったときには、健康管理アプリの活用や臨床心理士への相談もできます。
生活習慣病の原因になる喫煙をやめたいと考えている方はご相談ください。
＼気になる症状を、いつでも気軽に／
まずはご相談を申し込む
※診療内容に迷われていても、予約後にスタッフから確認のご連絡をいたしますのでご安心ください。
※相談日時や症状を選択していただく簡単な予約フォームに進みます。
参考文献
健康づくりサポートネット 生活習慣予防のための健康情報サイト
日本生活習慣病予防協会 生活習慣病とその予防 一無、二少、三多で生活習慣を予防
厚生労働省 平成29年（2017）患者調査の概況 生活習慣予防
日本循環器学会 循環器病ってどんな病気？
李 昌一（2014） 酸化ストレスと歯周病 生活習慣病・血管病としての歯周病14.281-286
高久 史麿（2004）生活習慣病と健康2131(3)14-19
政府広報オンライン 生活習慣病とは？予防と早期発見のために定期的な受診を！
全国健康保険協会 生活習慣病予防健診・特定健康診査のご案内