産後の生理はいつから再開する?授乳中に来ない理由・悪露との違い・受診の目安を産婦人科医が解説
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シンクヘルスクリニック 院長
岩佐美穂
資格(産婦人科専門医、日本抗加齢医学専門医、がん治療認定医)
所属学会(日本産科婦人科学会、日本成人病(生活習慣病)学会、日本抗加齢医学会、日本癌治療学会)
日本赤十字社医療センター、虎の門病院で産婦人科医として臨床経験を積む。「忙しい女性がもっと気楽に相談できる場所を作りたい」との想いを胸に、2024年11月、オンライン診療専門のシンクヘルスクリニックを開院。
婦人科(生理痛・更年期)、皮膚科、医療用漢方など、女性ならではの悩みに幅広く対応。心のケアも大切に、一人ひとりが安心して自分の体と向き合えるようサポートしている。
目次
1 産後の生理はいつから再開する?授乳方法による違い
1.1 ミルクのみの場合:早ければ産後5〜6週頃から
1.2 完全母乳の場合:数か月〜1年以上来ないことも
1.3 混合育児の場合:ミルクの割合だけでは予測できない
2 なぜ授乳中は生理が来ないの?ホルモンの仕組みと母乳への影響
3 生理再開前でも妊娠する?排卵のタイミングと授乳中の避妊
3.1 授乳中の避妊は、使い方や開始時期を医師と相談
3.2 2人目の妊活は、生理の有無だけでなく体の回復も考えて
4 これって生理?悪露・不正出血との見分け方
4.1 悪露と生理を見分けるチェックポイント
4.2 生理再開前に、前兆症状はある?
5 産後の生理不順や痛みの変化と、無理なくできるセルフケア
5.1 生理周期や生理痛が変化する理由
5.2 育児の中で取り入れやすいセルフケア
5.2.1 食事は「完璧」より、食べられるものを組み合わせる
5.2.2 休息は、家族や周囲の手を借りて確保する
5.2.3 体調に合わせて温める・軽く動く
5.2.4 痛みは我慢せず、授乳中に使える薬を相談する
6 こんなときは産婦人科へ。受診の目安を知っておこう
6.1 卒乳・断乳後3か月程度たっても来ないとき
6.2 大量出血や激しい痛みは、すぐに対面診療へ
6.3 外出が難しいときは、オンライン診療で相談する方法も
7 産後の生理再開は、周りと比べなくて大丈夫
「出産から何か月もたつのに、生理が来ない。このままで大丈夫?」
「まだ授乳中なのに、もう生理が始まった。母乳に影響はない?」
産後は赤ちゃんのお世話に追われる一方で、自分の体の変化にも戸惑うことがあります。周りのママと比べて、生理の再開が早い・遅いと不安になる方もいるでしょう。
産後の生理が再開する時期には、大きな個人差があります。 特に授乳の回数や間隔に左右されるため、「産後〇か月で来なければ異常」と一律には判断できません。
この記事では、授乳方法による再開時期の違い、生理と悪露の見分け方、授乳中の避妊、産婦人科に相談したい目安を解説します。
| 産後の生理はいつから再開する?授乳方法による違い
産後は、妊娠・出産で大きく変化したホルモンの働きが徐々に変わり、排卵や生理が再開していきます。その時期を左右する要因の一つが授乳です。
ただし、夜間授乳の有無や授乳間隔によって経過は異なります。授乳方法別の時期は厳密な平均値ではなく、幅のある目安として捉えましょう。
| 授乳方法 | 生理再開の目安・特徴 |
|---|---|
| ミルクのみ | 早ければ産後5〜6週頃から再開することがあります |
| 母乳のみ | 数か月以上来ないことがあり、授乳を減らすまで再開しない場合もあります |
| 母乳とミルクの混合 | 早ければ産後5〜6週頃から。母乳を与える頻度などで大きく変わります |
| ミルクのみの場合:早ければ産後5〜6週頃から

授乳による排卵の抑制が少ないため、母乳育児の場合より早く生理が戻る傾向があります。早ければ産後5〜6週頃に再開することもあります。
ただし、この時期の出血は悪露が続いている可能性もあります。「時期的に生理だろう」と決めつけず、出血の量や経過、痛みなども確認することが大切です。
| 完全母乳の場合:数か月〜1年以上来ないことも
母乳を作るホルモンの影響で排卵が抑えられ、生理の再開が遅くなることがあります。特に夜間も含めて授乳している場合は、授乳回数が減るまで生理が戻らないこともあります。
産後半年を過ぎても生理が来ない方や、授乳を続けている間は1年以上来ない方もいます。一方で、完全母乳でも早く再開する方はいます。
なお、生理が再開する早さを、母乳育児がうまくいっているかどうかの物差しにする必要はありません。
| 混合育児の場合:ミルクの割合だけでは予測できない
混合育児では、母乳を与える回数や間隔によって再開時期が変わります。夜間の授乳が減ったり、授乳間隔が長くなったりすることをきっかけに、排卵や生理が戻る場合があります。
生理が再開する時期は早い方も遅い方もいます。周りと比べるより、ご自身の授乳状況と体調を合わせて見ていきましょう。
| なぜ授乳中は生理が来ないの?ホルモンの仕組みと母乳への影響
赤ちゃんがおっぱいを吸うと、母乳を作るためのホルモンである、プロラクチンの分泌が促されます。授乳に伴うホルモンの働きによって、脳から卵巣への排卵を促す指令が抑えられ、生理が来にくくなります。
授乳の回数が減るにつれて、この抑制が弱まり、排卵が戻ってくることがあります。ただし、授乳回数が同じでも体の反応には個人差があります。
また、生理が再開しても、基本的には授乳を続けられます。生理に伴うホルモン変化の時期に、赤ちゃんの飲み方や母乳量の変化を感じる方もいますが、生理が来ても今まで通りの授乳で問題ありません。
母乳が足りているか心配なときは、生理の有無ではなく、赤ちゃんの体重増加や尿の出方などを確認しましょう。飲む量が明らかに減った、尿が少ない、体重が増えないといった場合は、小児科や助産師に相談してください。
| 生理再開前でも妊娠する?排卵のタイミングと授乳中の避妊

「生理が来ていないから妊娠しない」とは限りません。
そもそも排卵が起こり妊娠しなかった場合、その後生理が来ます。そのため、産後初めての生理を見る前に排卵し、そのまま妊娠する可能性があるのです。そのため授乳中でも、産後早期から妊娠が成立する場合があります。
授乳しているという理由だけで避妊できていると考えず、次の妊娠を希望する時期に合わせて避妊を考えましょう。
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| 授乳中の避妊は、使い方や開始時期を医師と相談
授乳中の避妊には、次のような選択肢があります。
| 方法 | 特徴・注意点 |
|---|---|
| コンドーム | ホルモンを含まず、授乳中も使えます。毎回、性行為の最初から正しく装着します |
| 黄体ホルモン単剤の経口避妊薬(ミニピル) | エストロゲンを含まない飲み薬です。授乳中の使用や開始方法は、医師と要相談 |
| 子宮内避妊具・子宮内避妊システム(IUD・IUS) | 子宮内に器具を装着する方法です。子宮の回復状態などを確認し、装着します |
海外では授乳中に使用できる避妊法としてミニピルが挙げられていますが、国内製品を使う際は日本の添付文書に沿った判断が必要です。
例えば「スリンダ」は、国内添付文書で母乳中への移行が報告されており、薬を使うメリットと母乳栄養を考慮して授乳の継続・中止を検討するとされています。授乳中でも誰にでも使えると自己判断せず、医師に相談してください。
エストロゲンを含む低用量ピルも、産後の時期や授乳状況によって使用の可否が変わります。妊娠前に飲んでいた薬が手元にあっても、そのまま再開しないようにしましょう。
ミニピルについては、スリンダの避妊効果や特徴を解説した記事もご覧ください。
| 2人目の妊活は、生理の有無だけでなく体の回復も考えて
次のお子さんを希望している場合は、年齢、これまでの妊娠・出産の経過、貧血や持病の有無なども踏まえて、妊活の時期を相談しましょう。
米国産科婦人科学会などは、出産から次の妊娠まで6か月未満の間隔を避け、18か月未満で妊娠を希望する場合には、リスクとメリットについて説明・相談することを勧めています。これは「次の出産まで」ではなく「次の妊娠まで」の期間です。
ただし、すべての方に同じ待機期間を当てはめるものではありません。帝王切開後の方、不妊治療を受けていた方、年齢の面で早めの妊活を考えている方は、出産した医療機関や婦人科で個別に相談してください。
授乳を続けながら妊娠する方もいるため、妊活のために必ず卒乳が必要というわけではありません。生理や排卵が戻らない場合や不妊治療を予定する場合は、授乳についても医師と相談し、ご自身と赤ちゃんに合う進め方を考えていきましょう。
| これって生理?悪露・不正出血との見分け方
産後の出血がすべて生理とは限りません。出血の時期や変化を記録しておくと、受診時にも役立ちます。
| 悪露と生理を見分けるチェックポイント

悪露とは、出産後、子宮が回復する過程で出る血液や分泌物などのことです。経腟分娩でも帝王切開でも見られます。
一般的には、赤い出血から茶色・薄い黄色や白っぽい分泌物へと変化し、数週間かけて減っていきます。
| 確認する点 | 悪露で見られやすい経過 | 生理の可能性を考える経過 |
|---|---|---|
| 出血の始まり | 出産直後から続いている | 悪露が落ち着いた後に、改めて始まった |
| 色・量の変化 | 全体として色が薄くなり、量も減っていく | 赤い出血が数日続き、その後減っていく |
| その後の経過 | 徐々に治まっていく | 後日、同じような出血が繰り返されることがある |
ただし、見た目や日数だけで確実に見分けることはできません。 産後の子宮の回復不良や感染などで出血することもあります。
いったん減った出血が急に増えた、発熱や強い腹痛がある、悪臭がするといった場合は、産婦人科の受診をおすすめします。
| 生理再開前に、前兆症状はある?
下腹部の違和感、腰の重さ、胸の張り、気分の変化などを感じる方もいます。ただし、これらは授乳や疲労などでも起こるため、症状だけで排卵や生理再開を予測することはできません。
前兆がないまま生理が始まる方もいます。「そろそろ来そう」「まだ来なさそう」という感覚は、避妊の判断には使わないようにしましょう。
生理前に繰り返す気分の落ち込みやイライラについては、PMSの原因と対処法を解説した記事も参考にしてください。
| 産後の生理不順や痛みの変化と、無理なくできるセルフケア

産後に生理が再開したものの、
「周期がバラバラで安定しない」
「以前と違って生理痛がひどくなった(あるいは軽くなった)」
と戸惑う方は少なくありません。
ここでは、産後の生理不順や生理痛の変化が起こる理由と、忙しい育児中でも無理なく実践できるセルフケアについて解説します。
| 生理周期や生理痛が変化する理由
生理が一度再開しても、すぐに毎月同じ周期になるとは限りません。授乳を続けている間は排卵が安定せず、次の生理まで間隔が空いたり、排卵を伴わない出血が起こったりすることがあります。
また、妊娠前より生理痛が軽くなる方もいれば、痛みが気になるようになる方もいます。睡眠不足や疲れによって、痛みをつらく感じることもあるでしょう。
ただし、「産後だから」「骨盤がゆがんでいるから」と強い生理痛を経過観察するのはおすすめしません。痛みが悪化する場合や出血が多い場合には、子宮筋腫や子宮腺筋症など、別の原因がないか確認することも大切です。
生理痛の原因と対処法と産後・授乳期の不眠についても合わせてご覧ください。
| 育児の中で取り入れやすいセルフケア
赤ちゃんのお世話に追われる忙しい毎日の中で、自分自身のケアはどうしても後回しになりがちです。しかしホルモンバランスを整え、産後の体調をスムーズに回復させるためには、日々の生活の中で無理のないセルフケアを少しずつ取り入れていくのがとても大切です。
ここでは、育児の合間に実践しやすい食事・休養・骨盤ケアといった具体的な方法をご紹介します。
– 食事は「完璧」より、食べられるものを組み合わせる

主食に加え、肉・魚・卵・大豆製品などのたんぱく質を取りましょう。
出血が多い方は鉄不足にも注意が必要です。赤身の肉や魚などを取り入れ、強い疲れや息切れ、動悸がある場合は貧血の検査を相談してください。貧血は食事だけでは改善しない場合もあります。
– 休息は、家族や周囲の手を借りて確保する
「赤ちゃんが寝たら家事をしなければ」と頑張りすぎず、横になる時間も大切にしましょう。夜間対応を分担する、家事を減らすなど、休める環境を整えることもケアの一つです。
眠れない状態が続く方は、産後・授乳期の不眠とセルフケアについての記事も参考にしてください。
– 体調に合わせて温める・軽く動く
お腹や腰を心地よい程度に温めたり、産後の回復状態に合わせて軽い散歩やストレッチをしたりすると、つらさが和らぐことがあります。
骨盤底筋の運動は尿漏れなどへのケアになりますが、生理再開を早めるために行うものではありません。
– 痛みは我慢せず、授乳中に使える薬を相談する
授乳中でも使用を検討できる鎮痛薬はあります。薬の種類や量、赤ちゃんの月齢などを確認して選ぶため、医師や薬剤師に相談してください。

| こんなときは産婦人科へ。受診の目安を知っておこう
産後の生理再開には個人差が大きく、ホルモンバランスの乱れも起こりやすいため、「もう少し様子を見ても大丈夫かな?」と受診を迷ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、放置せずに受診すべきタイミングをあらかじめ知っておくことで、過度な不安を防ぎ、万が一のトラブルにも早めに対処できます。
以下に挙げる基準に当てはまる場合や、体調に不安を感じる場合は、無理をせず産婦人科・婦人科へ相談しましょう。
| 卒乳・断乳後3か月程度たっても来ないとき
卒乳・断乳後も生理が戻らず、3か月程度たっている場合は、婦人科に相談する一つの目安です。授乳以外にも、妊娠、甲状腺の病気、体重変化などが関係していることがあります。
授乳中であれば、産後1年を過ぎても生理が来ないこと自体が、直ちに異常とは限りません。ただし、授乳回数がかなり減っている、体調不良がある、次の妊娠を希望しているなどの場合は、時期を待たずに受診を検討しましょう。
授乳していないのに数か月たっても再開しない場合も、産後1年まで待たずに受診しましょう。
妊娠の可能性がある性行為があった場合は、「授乳中だから来ない」と決めつけず、妊娠検査薬の説明書に従って検査してください。
| 大量出血や激しい痛みは、すぐに対面診療へ

次のような症状がある場合は、通常の生理と自己判断せず、速やかに出産した医療機関や産婦人科に連絡してください。
・大きな血の塊が出る、出血が急に増えた
・強い腹痛や、悪化していく痛み
・38℃以上の発熱や、悪臭のある分泌物
・出血に伴うめまい、動悸、息苦しさ
意識が遠のく、立てないほどのふらつき、息苦しさが強いなどの場合は、119番で救急車を要請してください。
大量ではなくても、出血が長引く、生理以外の出血を繰り返す、痛みで育児や日常生活に支障が出る場合は、我慢せず受診しましょう。
| 外出が難しいときは、オンライン診療で相談する方法も
「子どもを連れて受診するのが大変」
「受診した方がよいのか迷う」
というときは、オンライン診療で相談する方法もあります。
出産からの期間、授乳の状況、出血や痛みの経過を伺い、対面での検査が必要かどうかを整理できます。ただし、オンライン診療では内診や超音波検査、採血はできません。診察内容によっては、対面の医療機関をご案内します。
大量出血、強い腹痛、発熱などがある場合は、オンラインの予約を待たずに対面診療を受けてください。
急を要する症状がなく、産後の生理や避妊について相談したい方は、当院のオンライン診療もご活用ください。
| 産後の生理再開は、周りと比べなくて大丈夫
産後の生理が戻る時期は人それぞれです。ミルク育児では早ければ産後5〜6週頃に再開することがあり、母乳育児では授乳を減らすまで戻らない場合もあります。
一方で、生理が来る前に排卵することがあるため、次の妊娠を希望していない場合は避妊が必要です。また、卒乳後も生理が戻らない、出血が多い、痛みが強いといったときには、授乳や産後の変化だけが原因とは限りません。
赤ちゃんのお世話で、ご自身の体のことは後回しになりがちかもしれません。「これくらいで相談していいのかな」と迷うときも、一人で抱えず、産婦人科を頼ってください。
参考文献
・NHS:Your body after the birth
・Pregnancy, Birth and Baby:Periods while breastfeeding
・NHS:Sex and contraception after birth
・PMDA:スリンダ錠28 電子添文
・ACOG / SMFM:Obstetric Care Consensus No. 8: Interpregnancy Care
・ASRM:Current evaluation of amenorrhea: a committee opinion (2024)
・CDC:Urgent Maternal Warning Signs and Symptoms
※参考情報確認日:2026年10月26日


