糖尿病と「なんとなく続く皮膚のかゆみ」—その原因と対策、オンライン診療でできること
ホーム > ブログ

執筆者:シンクヘルスクリニック院長 岩佐美穂
共同執筆者:日本内科学会総合内科専門医・日本糖尿病学会専門医 櫻木哲詩
目次
1 その「かゆみ」、糖尿病に伴う皮膚トラブルが関係しているかもしれません
2 糖尿病と皮膚のかゆみの関係
2.1 高血糖による脱水とバリア機能低下
2.2 汗をかきづらくなることで乾燥が強くなることも
2.3 感染症もかゆみの原因となる
3 女性の「気になるかゆみ」は性器カンジダ症の可能性も
4 HbA1cが“安定していても”油断できない理由
5 皮膚のかゆみ・乾燥を和らげるセルフケア
6 皮膚症状の改善には、血糖管理も大切
7 忙しい方でも続けられる、オンラインでの糖尿病診療
7.1 通院時間をゼロに、治療は継続
7.2 CGMで「隠れ高血糖」を見える化
8 まとめ
「最近、ふくらはぎやすねが乾燥してかゆい」
「保湿してもすぐぶり返す」
このような症状はありませんか。皮膚のかゆみは、乾燥や湿疹など身近な原因で起こることが多い症状です。
一方で、糖尿病のある方では、血糖値の状態や神経障害、感染症などが関係して、かゆみや皮膚トラブルが起こりやすくなることがあります。
かゆみだけで血糖状態を判断することはできませんが、症状が長引く場合や繰り返す場合には、皮膚の状態だけでなく、糖尿病の治療状況や合併症についても確認することが大切です。
特に、忙しさから通院が途切れがちな方は、皮膚症状をきっかけに現在の治療状況を見直してみるのもよいでしょう。
本記事では、糖尿病とかゆみの関係、日常生活でできる対策、オンライン診療で相談できることについてわかりやすく解説します。
| その「かゆみ」、糖尿病に伴うひふトラブルが関係しているかもしれません
ふと気づくと、無意識に足をかいてしまう。
市販の保湿剤やかゆみ止めを使っても、なかなか良くならない。
そのようなかゆみは、乾燥や湿疹など身近な原因で起こることが多い一方、糖尿病のある方では、皮膚の乾燥や神経障害、感染症などが関係している場合があります。
糖尿病の症状というと、「のどが渇く」「尿の回数が増える」「体重が減る」といった症状を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし糖尿病のある方は、皮膚の乾燥、かゆみ、感染症、傷の治りにくさなど、さまざまな皮膚トラブルが起こりやすくなることも知られています。
乾燥しやすいすねや足などに、かゆみが続くこともあります。ただし、かゆみだけで血糖状態を判断することはできません。
「冬だから」「年齢のせいだから」と自己判断せず、症状が長引く場合や、赤み・ただれ・水ぶくれ・傷の治りにくさなどを伴う場合は、早めに医師へ相談しましょう。
| 糖尿病と皮膚のかゆみの関係

糖尿病のある方に皮膚のかゆみが起こりやすくなる背景には、いくつかの要因があります。
代表的なのは、皮膚の乾燥やバリア機能の低下、神経障害、感染症などです。また、血流の低下が皮膚の状態に影響することもあります。
これらの要因が重なることで、かゆみが長引いたり、保湿しても繰り返したりすることがあります。
| 高血糖による脱水とバリア機能低下
血糖値が著しく高い状態では、尿中に糖が多く排出され、それに伴って尿量が増えることがあります。その結果、体が脱水傾向となり、皮膚の乾燥を悪化させる一因になることがあります。
皮膚が乾燥すると、外部刺激から肌を守るバリア機能が低下し、衣類のこすれや入浴時の刺激、乾燥した空気などによって、かゆみを感じやすくなることがあります。
また、糖尿病のある方では、皮膚の乾燥やかゆみが比較的よくみられることが報告されています。その背景には、乾燥だけでなく、糖尿病性神経障害など複数の要因が関係すると考えられています。
| 汗をかきづらくなることで乾燥が強くなることも
糖尿病が長く続くと、神経障害の一つとして、自律神経の働きが低下することがあります。
自律神経は、汗をかく量や血流の調整にかかわる神経です。自律神経の働きが弱くなると、特に足などで汗をかきにくくなり、皮膚のうるおいが保ちにくくなります。
その結果、乾燥が強くなり、かゆみやひび割れにつながることがあるのです。
| 感染症もかゆみの原因となる
糖尿病では、血糖値が高い状態が続くと、細菌や真菌、いわゆるカビによる感染症が起こりやすくなることがあります。
たとえば、足の水虫、爪白癬、皮膚の細菌感染、外陰部や腟のカンジダ症などです。感染症がある場合、保湿だけでは改善しにくく、抗真菌薬や抗菌薬など原因に応じた治療が必要になります。
かゆみだけでなく、赤み、ただれ、ジュクジュク、白い皮むけ、におい、痛み、腫れ、発熱などがある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
| 女性の「気になるかゆみ」は性器カンジダ症の可能性も

女性の糖尿病患者さんで特に注意したいのが、デリケートゾーン(外陰部・腟)のかゆみです。
高血糖の状態が続くと、外陰部や腟のカンジダ症などの真菌感染症が起こりやすくなることがあります。高血糖に伴う体内環境の変化や免疫機能への影響など、複数の要因が関係すると考えられています。
性器カンジダ症の症状は、強いかゆみ、白いポロポロしたおりものが多い、ひりひりするなどです。
こうした症状を繰り返す場合や、市販のかゆみ止めでは治らず再発を繰り返す場合は、自己判断で治療を続けず、医師に相談することが大切です。カンジダ症と診断された場合には、抗真菌薬による治療を行い、必要に応じて血糖コントロールの状態も確認します。
オンライン診療なら、プライバシーを守りながら医師に相談可能です。
▼カンジダ症に関する情報はこちら▼
デリケートゾーン・おりもの異常セルフチェック|原因と病気を解説
カンジダ症を繰り返す理由は?再発を防ぐために
| HbA1cが“安定していても”油断できない理由
「HbA1cは悪くないから、糖尿病の管理は問題ない」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。
HbA1cは、過去1〜2か月程度の平均的な血糖状態を示す指標ですが、日の中で起こる食後の血糖上昇や低血糖など、細かな血糖変動をすべて把握できるわけではありません。そのため、HbA1cが目標範囲内であっても、食後に血糖値が大きく上昇している場合や、時間帯によって血糖値が大きく変動している場合があります。
ただし、こうした血糖変動そのものが皮膚のかゆみを直接引き起こすとは限りません。かゆみには、皮膚の乾燥や湿疹、神経障害、感染症など、さまざまな原因が関係します。
皮膚症状が長く続く場合や繰り返す場合は、皮膚の状態だけでなく、現在の血糖管理や治療内容、生活習慣についても一度確認してみるとよいでしょう。
オンライン診療では、症状の経過、生活リズム、食事内容、内服状況、血糖値の記録などを確認しながら、必要に応じて検査や治療の調整につなげることができます。
当院では糖尿病に関するご相談を承っています。気になる方は、ぜひお問い合わせくださいね。

| 皮膚のかゆみ・乾燥を和らげるセルフケア

つらいかゆみを和らげるには、皮膚を清潔に保ち、乾燥や刺激から守ることが大切です。
そこでまず意識したいのは、毎日の保湿です。
入浴後は皮膚の水分が失われやすいため、肌がまだ少し湿っているうちに保湿剤を塗りましょう。よく選ばれる保湿剤は、ヘパリン類似物質、尿素配合クリーム、ワセリンなどです。
ただし尿素配合クリームは、ひび割れや傷がある部分では刺激を感じることがあります。赤みやただれ、ジュクジュクした湿疹がある場合は、自己判断で塗り続けず、医師や薬剤師に相談してください。
また、熱いお湯や長時間の入浴は皮膚の乾燥を悪化させることがあるため、ぬるめのお湯にしましょう。ナイロンタオルなどで強くこするのではなく、よく泡立てた石けんやボディーソープでやさしく洗うことも大切です。
肌着は、刺激の少ない綿素材などを選ぶとよいでしょう。かゆい部分をかきむしると、傷から感染を起こすことがあるため、爪を短く整えるほか、冷たいタオルや保冷剤をタオルで包んで冷やすなど、「かかない工夫」も心がけるとよいですよ。
| 皮膚症状の改善には、血糖管理も大切
保湿やスキンケアで一時的に良くなっても、かゆみが何度もぶり返す場合は、皮膚だけでなく体の内側の状態も確認することが大切です。
高血糖が続いている場合、皮膚の乾燥、血流低下、感染症、傷の治りにくさなどが起こりやすくなります。そのため、皮膚症状への対応とあわせて、血糖管理の状態を確認することも重要なポイントです。
ただし「かゆみがある=糖尿病が悪化している」と過度に心配する必要はありません。湿疹、アトピー性皮膚炎、じんましん、薬の副作用、腎臓や肝臓の病気など、糖尿病以外の原因でかゆみが出ることもあります。
もし皮膚科で治療してもかゆみが改善しにくい場合や、糖尿病の治療が途切れている場合は、内科での詳しい検査もあわせて検討するとよいかもしれません。
必要に応じてHbA1cだけでなく、食後血糖、腎機能、肝機能、尿検査、内服薬の内容などを確認しながら、原因を探っていきましょう。
| 忙しい方でも続けられる、オンラインでの糖尿病診療

「血糖管理が大切なのはわかっているけれど、毎月の通院が負担」と、感じている方も少なくありません。
糖尿病は、症状がない時期にも定期的な確認が大切な病気です。通院が途切れてしまうと、血糖値の変化や合併症のサインに気づくのが遅れることがあります。
オンライン診療は、忙しい方でも通院の負担を減らしながら治療を続けやすくするための選択肢の一つです。
| 通院時間をゼロに、治療は継続
オンライン診療では、スマートフォンやパソコンを使って、自宅や職場などから医師に相談できます。
移動時間や待ち時間の負担を減るため、仕事や家事、育児で忙しい方でも治療を続けやすい点がメリットです。
もちろん、血液検査、尿検査、足の診察、皮膚の詳しい診察など、対面診療での確認が必要な場面もあります。
そのためオンライン診療ですべてを完結させるものではなく、必要に応じて対面診療と組み合わせながら、治療を継続していくことが大切です。
関連記事
糖尿病のオンライン診療|4つの特徴で治療を続けられる形に再設計
| CGMで「隠れ高血糖」を見える化

血糖値は、食事内容や運動、睡眠、ストレスによって1日の中でも変動します。
当院では、必要に応じて腕に貼るだけで24時間の血糖変動がわかるCGM(持続血糖測定器)を活用しています。
CGMを使うと、HbA1cだけではわかりにくい食後の血糖上昇や、夜間・早朝の血糖変動を把握しやすくなります。そのため、「どの食事で血糖値が上がりやすいか」「運動するとどの程度下がるか」など、自分の生活に合った対策を考えやすくなります。
また、健康管理アプリ・シンクヘルスを活用し、食事や運動のデータとCGMのデータを連動させて、より実生活に根付いた血糖管理をサポートします。今までCGMを体験したことがない方も、一度検討してみてはいかがでしょうか。
関連記事
糖尿病治療はアプリで変わる!無理なく血糖値を下げる新習慣
| まとめ
皮膚のかゆみは、乾燥や湿疹など身近な原因で起こることが多い症状です。一方で、糖尿病のある方は、皮膚の乾燥や神経障害、感染症などが関係して、かゆみが長引くことがあります。
特に、足のかゆみ、傷の治りにくさ、赤みやただれ、デリケートゾーンのかゆみ、繰り返すカンジダ症など気になる症状がある場合は、深刻なトラブルにつながることもあるため、早めに医師へ相談しましょう。
保湿などのセルフケアを続けても改善しない場合は、皮膚の治療だけでなく、血糖管理や生活習慣の見直しも大切です。HbA1ⅽが目標範囲内でも、食後高血糖や血糖変動が隠れていることがあります。
オンライン診療は、忙しい方でも通院の負担を減らしながら治療を続けるための選択肢の一つです。「最近、足がかゆい」「保湿してもぶり返す」「血糖管理に不安がある」と感じたら、まずは一度お気軽にご相談ください。

日本赤十字社医療センター、虎の門病院で産婦人科医として臨床経験を積む。「忙しく頑張っている人がもっと気楽に相談できる場所を作りたい」との想いを胸に、2024年11月、オンライン診療専門のシンクヘルスクリニックを開院。
内科、皮膚科、医療用漢方、婦人科など、受診者の悩みに幅広く対応。心のケアも大切に、一人ひとりが安心して自分の体と向き合えるようサポートしている。

シンクヘルスクリニック 非常勤医師
櫻木哲詩
資格(日本内科学会認定内科医、日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会専門医、日本フットケア・足病医学会 弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター)
所属学会(日本内科学会、日本糖尿病学会、日本褥瘡学会 在宅ケア推進協会、日本形成外科学会)
鳥取大学医学部にて地域枠一期生として卒業。鳥取県内でも有数の総合病院である山陰労災病院にて、糖尿病内科医として様々な症例を経験し副部長に就任。生まれ育った地域の方々への思いから、より深く地域医療に貢献するべくサクラギクリニックを開院。
専門医としての立場から医学的に最適な治療を考え、患者の生活や家族背景などを踏まえた総合的な判断で治療することを心がけている。


