緊張で血圧が高くなるのは危険?治療の必要性や将来の健康リスクも解説
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日本赤十字社医療センター、虎の門病院で産婦人科医として臨床経験を積む。「忙しく頑張っている人がもっと気楽に相談できる場所を作りたい」との想いを胸に、2024年11月、オンライン診療専門のシンクヘルスクリニックを開院。
内科、皮膚科、医療用漢方、婦人科など、受診者の悩みに幅広く対応。心のケアも大切に、一人ひとりが安心して自分の体と向き合えるようサポートしている。
目次
1 そもそも緊張や心配のしすぎで血圧は上がるのか
2 緊張による高血圧にはタイプがある
3 白衣高血圧
3.1 治療の必要性
3.2 将来の健康リスク
3.3 病院や健康診断で緊張してしまう時は
3.3.1 受診日や受診時間の工夫
3.3.2 深呼吸してリラックス
3.3.3 家庭での測定結果を持参する
4 職場高血圧
4.1治療の必要性
4.2 将来の健康リスク
4.3 職場高血圧を防ぐために
5 まとめ
家で血圧を測っても正常値なのに、健康診断や病院で血圧が高いと指摘された…といった経験がある方もいるかもしれません。
それが何度か続くと、病院へ行ったり健康診断を受けたりするたびに「また高く出るかもしれない」と考えてさらに緊張してしまうこともあります。
緊張で血圧が上がっても、一時的なものであれば気にする必要はないのでしょうか。
この記事では、緊張によって血圧が高くなることの危険性や治療の必要性、将来の健康リスクについても解説しています。ぜひ最後までご覧ください。
緊張や心配のしすぎなどのストレスは血圧を上昇させる一因になります。
緊張やストレスを感じると、交感神経が優位になり血管が収縮し、その結果血圧が上昇します。しかし、多くは一時的なものでしょう。
血圧は常に一定ではなく、健康な人でも一日の中で時間帯による変動があるのが普通です(日内変動)。
そのほか、季節や気温、運動などによっても変動するといわれています。
家庭で測定した血圧と、病院で測定した血圧がどちらも高いと、持続性高血圧と診断されるのが一般的です。これに対し、特定の場面でのみ血圧が上昇する場合、持続性高血圧とは区別されています。
医療機関や健康診断など、主に白衣を着た医療従事者から測定される場面で血圧が上昇するタイプを「白衣高血圧」、職場や仕事中にのみ血圧が上がるタイプを「職場高血圧」といいます。
いずれも、その場面での緊張やストレスが血圧上昇の主な要因です。
これら2つのタイプについて、それぞれ詳しくみていきましょう。
家庭での血圧は正常にもかかわらず、医療機関や健康診断で血圧が上昇する白衣高血圧は、全人口の15~30%にみられ、特に高齢者や女性に多い傾向があります。
血圧上昇が病院や健康診断の場面のみであれば、すぐに治療を開始する必要はないとされるケースが多いでしょう。
しかし、家庭での血圧が正常値であっても、仕事中など家庭以外での場面で高血圧を示している可能性もあるため注意が必要です。
病院や健康診断以外ではどの場面、時間帯でも正常血圧なのであれば、将来の脳心血管病のリスクは健康な人と変わらないといわれています。
しかし、白衣高血圧とされる人たちの中には、実は特定の場面や時間帯で高血圧を示しているのに気づいていないケースもあるのです。
このような場合には、むしろ持続性高血圧の人と同じくらい脳心血管病リスクがあるという研究結果もあります(※)。
そのため、家庭で一度測定した結果が正常血圧であったとしても、気にしなくてよいとはいいきれません。加えて、白衣高血圧は将来持続性高血圧に移行する可能性が高いともいわれています。
少なくとも、一度でも高血圧を指摘されたことがある方は定期的に家庭での血圧測定を続けていくことが推奨されています。
病院や健康診断で毎回緊張してしまうために、血圧測定が憂鬱だと感じる方も少なくありません。なるべく緊張しにくくするためのポイントをお伝えします。
時間に追われながら受診すると、焦ったり緊張したりしてしまうものです。
可能であれば時間に余裕のある日にちや時間帯に受診し、予約の時間より少し早めに到着して気持ちを整えるなどしてゆとりをもつとよいでしょう。
血圧測定前には深呼吸してなるべくリラックスすることを心掛けましょう。
深呼吸をすると副交感神経が優位になるため、血管が拡張して血圧が安定しやすいといわれています。
どうしても病院や健康診断で緊張してしまうという場合は、家庭で血圧を測定した記録を持参するとよいでしょう。
家庭での血圧は、できれば朝と晩の1日2回測定しておくとより血圧管理に役立ちますよ。
健康診断や医療機関での測定時に正常値でも、特定の場面で高血圧になることを「仮面高血圧」といいます。
高血圧と診断されていない人の10~15%にみられ、降圧治療(高血圧の人が血圧を下げるための治療)を受けている人の9~23%にみられると推定されています(※)。
そのうち、職場で高血圧になるタイプが「職場高血圧」であり、仕事中のストレスや緊張状態が主な要因です。
職場で血圧を測定する機会はあまりないので、高血圧に気づかず、健康状態の悪化が発覚しにくいのです。
(※)日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成 委員会(編)(2019):高血圧治療ガイドライン 2019
職場高血圧を含む仮面高血圧と診断を受けた人は、脳心血管病リスクが正常血圧の人に比べて2倍近くも上昇したというデータがあります(※)。
気づいた時にはすでに何らかの脳心血管病にかかっていたというケースも少なくありません。
高血圧状態に気づいたら、早めに医療機関を受診することが推奨されます。
職場高血圧は将来、持続性高血圧に移行するリスクも高いといわれており、注意が必要です。
また、仕事中のストレスや緊張が続いている状態は、あらゆるストレス性疾患のリスクも高めます。気づいた時から早めに対処する必要があるでしょう。
関連記事
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もし職場高血圧に気づいたら、あるいは将来職場高血圧にならないためには何をすべきなのでしょうか。
基本的には、通常の高血圧への対策と同様に、生活習慣の改善が基本となります。
生活習慣の改善には、
・運動不足の解消
・節酒、禁煙
・十分な睡眠をとる
などがあげられるでしょう。
それに加え、職場高血圧の人は仕事中に高ストレスになっていることが考えられるため、ストレス管理も重要です。
具体的には、
・ストレスの元に心当たりがあれば、上司や同僚に相談して解決する
・休暇をとるなどして仕事と離れる時間を増やす
・仕事以外の時間や休日はストレス発散できるような過ごし方を工夫する
などがよいでしょう。
今回は緊張による血圧への影響をテーマとし、医療機関や健康診断の時にだけ緊張して血圧が上がる「白衣高血圧」と、職場や仕事中に血圧が上がる「職場高血圧」について解説しました。
どちらも緊張やストレスによって血圧が上がるという点は共通していますが、発覚しにくいという意味で職場高血圧の方がより注意した方が良いでしょう。
いずれも持続性高血圧に移行する可能性もあり、職場高血圧に関しては将来の健康リスクも高いという研究結果もあるため、日ごろから健康管理を行う必要があります。
具体的には、
・健康診断をきちんと受け、可能であれば家庭での血圧測定記録も提示する
・生活習慣の改善(運動不足や睡眠不足の解消、塩分摂取量を減らす、節酒、禁煙)
・ストレスを溜めすぎない
ことが大切です。
高血圧はサイレントキラーとも呼ばれ、無症状で進行し、重大な脳心血管病のリスクを高めますが、早めの治療や対策でコントロール可能なものです。
当院でも、オンラインにて高血圧の診療を行っています。血圧が気になっている方はぜひお気軽にご相談ください。
それでは、当記事があなたの日々の健康管理に役立つことを願っています。
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参考文献
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浅山(2023).高血圧治療管理のエビデンスー家庭血圧を中心にー 帝京医学雑誌 46(1),1-14.
厚生労働省 e-ヘルスネット 高血圧
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