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妊娠中・授乳中の風邪薬は飲んでも大丈夫?安全な薬と受診の目安を産婦人科医が解説

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風邪を引いてつらそうな妊婦

岩佐美穂

執筆者
シンクヘルスクリニック 院長

岩佐美穂
資格(産婦人科専門医、日本抗加齢医学専門医、がん治療認定医)
所属学会(日本産科婦人科学会、日本成人病(生活習慣病)学会、日本抗加齢医学会、日本癌治療学会)

日本赤十字社医療センター、虎の門病院で産婦人科医として臨床経験を積む。「忙しい女性がもっと気楽に相談できる場所を作りたい」との想いを胸に、2024年11月、オンライン診療専門のシンクヘルスクリニックを開院。
婦人科(生理痛・更年期)、皮膚科、医療用漢方など、女性ならではの悩みに幅広く対応。心のケアも大切に、一人ひとりが安心して自分の体と向き合えるようサポートしている。

  

 

目次
1 妊娠・授乳中の風邪薬:自己判断の市販薬に注意する理由
 1.1 市販の総合風邪薬に含まれる成分に注意
2 【時期別】お腹の赤ちゃんへの影響と安全な薬
 2.1 妊娠初期:赤ちゃんの器官を作る大切な時期
2.2 妊娠中期・後期:お腹が大きくなってからの注意点
3 授乳中は時間をおけば薬を服用できる?
4 漢方薬なら安全?葛根湯などの正しい選び方
5 風邪で受診していい?病院で相談するメリット
 5.1 週数や症状に合わせた薬の処方が受けられる
6 病院に行く目安は?何科を受診すべきか
 6.1 すぐに受診したい7つの症状
 6.2 まずは受診先へ電話で確認を
7 自宅でできる+αのセルフケア
 7.1 喉の痛み・咳を和らげる「加湿とハチミツ」
 7.2 寒気・熱っぽさを和らげる「保温と水分補給」
8 まとめ:赤ちゃんのためにも無理せず医師へ相談を

 

 

妊娠中に喉が痛い、咳が止まらない、熱が出た――。

 

そんなとき、「薬を飲んだら赤ちゃんに影響するのでは」と不安になり、つらくても我慢してしまう方は少なくありません。

 

妊娠中だけでなく、授乳中も心配になりますよね。でも妊娠中や授乳中、体調が悪くなるときもあれば、薬を飲みたいような症状がでることもありますよね。

 

私自身もそうでした。妊娠中、育児中はただでさえ負担が大きいのに、体調が悪いとより一層つらいですよね。

 

上のお子さんがいる場合は、保育園、幼稚園、小学校から風邪をもらってきて、ママもうつってしまう、ということも多いと思います。

 

妊娠中・授乳中でも使用できる薬はあります。大切なのは、薬を一律に避けることではなく、妊娠週数や授乳状況、症状に応じて適切な薬を選ぶことです。

 

この記事では、妊娠中・授乳中の風邪薬の考え方や受診の目安、自宅でできるセルフケアについて、産婦人科医師の私が解説します。

 

 

| 妊娠・授乳中の風邪薬:自己判断の市販薬に注意する理由 

 

風邪薬

 

妊娠中や授乳中でも、風邪薬をまったく使えないわけではありません。ただし、市販薬を商品名や「以前飲んで問題なかった」という経験だけで選ぶことは避けましょう。

 

なぜなら、妊娠中は同じ薬でも使用する時期によって注意点が異なるためです。

 

症状がつらいときは、薬を我慢し続けるのではなく、医師または薬剤師に妊娠週数や授乳中であることを伝えて相談してください。

 

 

| 市販の総合風邪薬に含まれる成分に注意 

 

市販の総合風邪薬には、発熱、頭痛、鼻水、鼻づまり、咳、痰など、複数の症状に対応する成分がまとめて配合されています。

 

しかし、実際には「喉だけが痛い」という場合でも、必要のない解熱鎮痛成分や咳止め、抗ヒスタミン成分まで服用することになりかねません。

 

妊娠中に注意したいのが、ロキソプロフェンやイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)です。NSAIDsは妊娠後半に胎児の動脈管収縮や腎機能障害、羊水過少などを起こす可能性があるため、自己判断での使用は避ける必要があります。

 

「市販薬だから弱い」「一度だけなら必ず大丈夫」とは限りません。反対に、妊娠に気づかず薬を飲んでしまったからといって、直ちに赤ちゃんへ影響するとも限りません。

 

服用した商品名、回数、時期を確認し、産婦人科へ相談しましょう。

 

 

| 【時期別】お腹の赤ちゃんへの影響と安全な薬 

 

妊婦マーク 

 

薬の影響は、成分だけではなく、妊娠週数、服用量、服用期間によっても変わります。

 

時期 赤ちゃんの状態 薬を使用するときのポイント
妊娠4週未満 着床から妊娠成立の初期 一部の例外を除き、妊娠に気づかずお薬を飲んでしまっても赤ちゃんの奇形などにつながることはない、とされています。
妊娠4~15週頃 重要な器官が作られる時期 薬を選択する際、特に慎重な判断が必要です。
妊娠後期 出産に向けて成熟する時期 NSAIDsによる動脈管収縮、腎機能障害などに特に注意

 

上の表はあくまで目安です。実際の服用可否は医療機関へ確認してください。

 

 

| 妊娠初期:赤ちゃんの器官を作る大切な時期 

 

妊娠初期、とくに妊娠4~7週頃は、赤ちゃんの心臓や中枢神経、手足などの重要な器官が作られる「器官形成期」にあたります。そのため、薬の種類には慎重な判断が必要です。

 

とはいえ、妊娠初期にはすべての薬が使えないわけではありません。症状と必要性を検討したうえで、医師の管理下で使用できる薬もあります。

 

また、「妊娠に気づかず風邪薬を飲んでしまった」と相談される方も多くいらっしゃいます。服用しただけで自己判断により妊娠継続を諦めたり、必要以上に自分を責めたりする必要はありません。

 

薬の名称や服用時期を記録し、かかりつけの産婦人科や「妊娠と薬情報センター」へ相談しましょう。

 

≫「妊娠と薬情報センター」はこちらから

 

 

| 妊娠中期・後期:お腹が大きくなってからの注意点 

 

妊娠中期以降は、初期とは異なる薬の影響に注意します。

 

ロキソプロフェンやイブプロフェンなどのNSAIDsは、胎児の動脈管を収縮させたり、胎児の腎機能に影響して羊水量を減少させたりする可能性があります。内服薬だけでなく、湿布や塗り薬にもNSAIDsが含まれることがあるため、自己判断で使用しないようにしましょう。

 

発熱や痛みに対しては、一般的にアセトアミノフェンが妊娠中に比較的選択されやすい薬です。ただし、アセトアミノフェンも「妊娠中なら無制限に安全」という意味ではありません。必要性を確認したうえで、適切な量を必要最小限の期間使用することが基本です。

 

アセトアミノフェンは総合風邪薬にも含まれていることがあり、重複服用にも注意が必要です。

 

関連記事
【医師監修】妊婦がぎっくり腰になったらどうする?湿布や薬の注意点と、動けない時の対処法

 

 

| 授乳中は時間をおけば薬を服用できる? 

 

授乳後に赤ちゃんにゲップをさせる女性 

 

「薬を飲んだあと、次の授乳まで数時間空ければ大丈夫」と考える方もいますが、すべての薬に当てはまる方法ではありません。

 

薬が母乳中へ移行する量や、体内から減少するまでの時間は、成分によって異なります。また、新生児、早産児、持病のある赤ちゃんでは、より慎重な判断が必要になることもあります。

 

授乳直後に薬を飲むことで赤ちゃんへの影響を減らせる場合もありますが、授乳間隔を空ければ必ず安全になるとは限りません。反対に、授乳中でも通常どおり授乳を続けながら使用できる薬も多くあります。

 

自己判断で授乳を中断すると、乳房の張りや乳腺炎、母乳量の低下につながることもあります。「お薬を飲むから断乳しなければいけない」とは限らないので、医師や薬剤師に相談しましょう。

 

 

| 漢方薬なら安全?葛根湯などの正しい選び方 

 

漢方薬 

 

漢方薬は自然由来の生薬から作られているため、「妊娠中でも安全」と思われがちです。しかし、漢方薬にも作用や副作用があり、妊娠中の体質や症状に合わないものがあります。

 

風邪のひき始めに使われる葛根湯には、麻黄や甘草などの生薬が含まれています。麻黄には交感神経を刺激する作用があり、動悸や不眠、血圧上昇などを起こすことがあります。甘草を含む漢方薬を複数併用すると、むくみ、血圧上昇、低カリウム血症などの副作用にも注意が必要です。

 

また、葛根湯はすべての風邪に適しているわけではありません。一般的には、発症初期で寒気があり、まだ汗をあまりかいていない場合などに検討されます。

 

医療用漢方であっても、処方されれば無条件に安全というものではありません。妊娠週数、授乳状況、体質、症状、併用薬を医師に確認してもらい、自分に合った処方を受けることが大切です。

 

当院では、オンラインで妊娠中の漢方についてご相談いただけます。病院に行く時間が取れなかったり、子連れでの受診が億劫に感じたりする方は、一度ご検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

| 風邪で受診していい?病院で相談するメリット 

 

妊娠中は身体の免疫や呼吸・循環機能が変化しており、一部の感染症が重症化しやすくなります。また、高熱や強い咳、食事や水分を摂れない状態が続けば、お母さん自身の体力が消耗します。

 

妊娠中・授乳中に使用できる薬はあるため、つらい症状を我慢し続けず、早めに相談しましょう。

 

 

| 週数や症状に合わせた薬の処方が受けられる 

 

医療機関では、妊娠週数や授乳状況に加えて、発熱、喉の痛み、咳、鼻水、痰などの症状を確認し、必要な成分に絞って薬を選択できます。

 

例えば、症状や患者さんの状態に応じて、次のような薬が検討されます。

 

・発熱・痛み:アセトアミノフェン
・咳:妊娠・授乳状況を考慮した鎮咳薬
・痰:去痰薬
・鼻水:種類を選んだ抗ヒスタミン薬
・細菌感染が疑われる場合:妊娠中にも使用可能な抗菌薬
・インフルエンザ:抗インフルエンザ薬

 

実際の処方は、妊娠週数、持病、アレルギー、ほかの薬との飲み合わせによって異なります。

 

外出がつらい場合や、すでに対面で診断を受けているものの薬について追加で相談したい場合は、オンライン診療も選択肢になります。

 

当院でも、オンラインにて妊娠中の風邪薬に関するご相談を承っています。予約から会計までスマホ一つで完結できるオンライン診療を活用してみてはいかがでしょうか。

 

予約ページへのボタン

※ただし、検査や聴診、点滴などが必要な症状は、対面診療をご案内する場合もあります。

 

 

| 病院に行く目安は?何科を受診すべきか 

 

受診する妊婦と診察する医師

 

軽い鼻水や喉の違和感だけで、食事や水分を普段どおり摂れている場合は、セルフケアをしながら経過をみられることもあります。

 

一方、症状が強い場合や長引いている場合は、「ただの風邪」と決めつけず受診しましょう。

 

 

| すぐに受診したい7つの症状 

 

次のような症状がある場合は、早めの受診が必要です。

 

1. 38℃以上の発熱が続く
2. 息苦しさ、胸の痛み、呼吸が速いなどの症状がある
3. 咳が激しく、眠れない、会話が難しい
4. 水分が摂れない、尿が極端に少ない
5. 強い頭痛、意識がぼんやりする、繰り返し嘔吐する
6. 症状が数日たっても改善しない、または急に悪化した
7. お腹の張り、出血、破水感、胎動の減少などの産科症状がある

 

強い呼吸困難、唇が紫色になる、意識がもうろうとするなどの症状があれば、夜間や休日でも救急受診を検討してください。

 

なお、「4日以上続いたら受診」と一律に待つ必要はありません。妊娠中は症状が強い場合やインフルエンザが疑われる場合、発症早期の相談が重要です。

 

 

| まずは受診先へ電話で確認を 

 

妊娠中の方は、まずかかりつけの産婦人科へ電話し、症状を伝えて受診先を確認すると安心です。

 

ただし、発熱や咳がある患者さんの診察場所を分けている産婦人科もあります。直接来院せず、必ず事前に連絡しましょう。症状によっては、内科や発熱外来を案内される場合があります。

 

お腹の張り、性器出血、破水感、胎動の減少などを伴う場合は、かかりつけの産婦人科へ速やかに連絡してください。

 

なお、オンライン診療は、次のような場合に活用しやすい方法です。

 

・症状は比較的軽いものの、薬を飲んでよいか相談したい
・小さな子どもがいて外出が難しい授乳中に使える薬を確認したい
・対面受診後も症状が残り、追加の薬ついて相談したい

 

当院でもオンライン診療による妊娠中の風邪に関する相談を承っているので、上記に当てはまる方は一度ご検討してみてはいかがでしょうか。

 

≫妊娠中の風邪薬について産婦人科医に相談する

 

一方、高熱や呼吸困難、強い脱水、産科的な異常がある場合は、早めに対面での診察を受けてください。

 

 

| 自宅でできる+αのセルフケア 

 

お茶を飲んでリラックスしている妊婦 

 

症状が軽い場合や、夜間ですぐに受診できない場合は、無理のない範囲でセルフケアを取り入れましょう。

 

ただし、セルフケアは医療機関への相談を先延ばしにするためのものではありません。症状が強くなる場合は早めに受診してください。

 

 

| 喉の痛み・咳を和らげる「加湿とハチミツ」 

 

空気が乾燥すると、喉の粘膜が刺激され、痛みや咳が強くなることがあります。
室内が乾燥しすぎないように調整し、少量ずつこまめに水分を摂りましょう。温かい飲み物や塩水うがいで、喉の不快感が和らぐこともあります。

 

また、ハチミツは妊娠中・授乳中のお母さんが摂取しても問題ありません。温かい飲み物に加えると、咳や喉の刺激を和らげる効果が期待できます。

※ただし、1歳未満の赤ちゃんには乳児ボツリヌス症のリスクがあるため、ハチミツを直接与えてはいけません。

 

 

| 寒気・熱っぽさを和らげる「保温と水分補給」 

 

寒気があるときは、首元や身体を適度に温め、楽な姿勢で休みましょう。ただし、高熱があり暑く感じるときに、厚着をして無理に汗をかく必要はありません。

 

発熱時は脱水になりやすいため、水やお茶、スープ、経口補水液などを少量ずつ摂取してください。糖分や塩分の摂取制限がある方は、経口補水液の使用について医師へ確認しましょう。

 

生姜湯など、飲みやすい温かい飲み物を利用しても構いませんが、生姜だけで感染症を治したり、免疫力を大幅に高めたりできるわけではありません。体調に合わせて、休養と水分補給を優先しましょう。

 

 

| まとめ:赤ちゃんのためにも無理せず医師へ相談を 

 

妊娠中・授乳中だからといって、風邪薬をすべて我慢する必要はありません。妊娠週数や症状に合わせて、比較的安全に使用できる薬があります。

 

一方、市販の総合風邪薬には複数の成分が含まれており、妊娠時期によって避けたい成分もあります。漢方薬も含め、自己判断で薬を選ばないことが大切です。

 

つらい症状を我慢しすぎると、睡眠や食事、水分摂取が妨げられ、お母さんの回復が遅れることもあります。

 

外出が難しいときや、妊娠中・授乳中に使える薬を相談したいとき、対面受診後に追加の処方が必要になったときは、オンライン診療もご活用ください。医師が妊娠週数、授乳状況、症状、併用薬を確認し、必要に応じて処方をご提案します。

 

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参考文献

・国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター
・国立成育医療研究センター「妊娠中のお薬Q&A
・国立成育医療研究センター「授乳と薬について知りたい方へ
・国立成育医療研究センター「授乳中の薬の使用について
・PMDA「シクロオキシゲナーゼ阻害作用を有するNSAIDsの妊婦への使用に関する注意改訂
・厚生労働省「妊婦・授乳中の方々へ―インフルエンザに関する情報

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