汗をかきやすい人にはこんな特徴が!~多汗症との違いも解説~
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執筆者
シンクヘルスクリニック 院長 岩佐美穂
資格(産婦人科専門医、がん治療認定医)、所属学会(抗加齢学会会員)
目次
1 汗には種類がある
1.1 体温調節のための汗
1.2 精神的な刺激による汗
1.3 味覚の刺激による汗
2 ちょっと動くと汗が出る人の特徴
2.1 代謝が良い
2.2 不安や緊張を感じやすい
2.3 太っている
2.4 家族に汗っかきの人がいる
2.5 病気の可能性
2.5.1 バセドウ病や糖尿病
2.5.2 更年期障害
2.5.3 自律神経失調症
3 汗っかき=多汗症なの?
3.1 多汗症とは
3.2 多汗症の分類
3.3 多汗症は治療できる
4 セルフでできる汗対策
4.1 バランスのよい食事
4.2 刺激物・嗜好品を摂り過ぎない
4.3 ストレスを溜めない
4.4 運動・入浴で汗をかく
5 まとめ
気温が高くなってくると気になるのが汗。服の汗染みやにおいなど、汗に関するお悩みは多いものです。
ちょっと動くだけで汗が出るのは、体質だけでなく、病気が隠れている場合もあります。不快な汗を少しでもコントロールしやすくする生活習慣のポイントまでまとめました。
どうぞ最後までお付き合いください。
汗は主に体温調節をする役割がありますが、皮膚の適度な湿度を保ち、細菌やウイルスから体を守る役割も持っているといわれています。
まずは汗の働きと種類について、解説します。
体温が上昇した際、体の水分を汗として体外に出し、蒸発する際に熱を奪うことで体温を一定に保つ働きをしています。夏の暑い日に汗をかくことや、運動したことによる汗は、体温調節のための汗です。
緊張や不安、焦りなど精神的ストレスを受けたときにかく汗もあります。「手に汗を握る」「冷や汗」といった言葉がまさにその状態を示していますね。
精神的な刺激による汗は、手のひらや足の裏、脇などにかきやすいとされています。
犬や猫などの動物も、外敵から急いで逃げるときや高いところから飛び移るときに、手足に汗をかきますが、滑り止めの役割も果たしているのです。
辛いものを食べると汗が止まらなくなる、という方は多いのではないでしょうか。
辛み成分のカプサイシンが温度を感知するセンサーを刺激して起こります。味覚の刺激による汗は、主に顔や頭に出やすい傾向にあります。
「ちょっと動いただけなのに、汗が出る…」「人よりも汗をかきやすい気がする」という方は以下のような特徴を持っているかもしれません。
代謝が良い人は、体の中で熱をたくさん生成し、体温が高めになる傾向があります。体温を一定に保つために、汗をかきやすくなるので、少し動いただけでも汗が出ることがあります。
しかし、代謝が悪い人の中にも、汗をたくさんかく人はいますので、代謝の良し悪しだけが関係しているわけではないのです。
上記の通り、精神的ストレスへの反応として汗をかくので、普段から不安や緊張を感じやすい人は、人よりも汗をかきやすいといえるかもしれません。
不安や緊張を感じるのは、自分を守るための正常な反応ですが、過剰となると、日常生活への影響が出ることもあります。
また、汗が人より多いことを不安に思ったり、恥ずかしいと思うことで、さらに汗が止まらなくなるという悪循環が生じる場合もあるのです。
皮膚の下にある皮下脂肪は熱が伝わりにくい性質を持っているため、肥満傾向にある人は体内に熱がこもりやすいと考えられます。体温を保つために、何とか熱を発散しようとすると、汗の量が多くなってしまうのです。
汗をかきやすいという特徴は、遺伝する傾向があるといわれています。そのため、家族に汗っかきの人がいる場合には、遺伝的な体質として、ご自身も汗っかきであるのかもしれません。
病気のサインの1つとして、汗の出方に変化が出る場合もあります。汗以外の症状が出ていないかに着目するのも大切です。
甲状腺で甲状腺ホルモンが過剰にされてしまうバセドウ病(甲状腺機能亢進症)、血糖値を下げるホルモン(インスリン)が不足したり、作用しにくくなる糖尿病では、発汗の異常が起こる場合があります。
バセドウ病は甲状腺ホルモンの過剰分泌によって、新陳代謝が活発になるため、汗が多くなる場合があります。その他にも、脈拍数の増加、体重の減少、動悸、手の震え、イライラ、眼球突出などの症状が出る人もいるのです。
また、糖尿病によって高血糖の状態が続くと、神経へのダメージが生じ、合併症を招く場合があります(糖尿病性神経障害)。
汗をコントロールする神経にダメージがあると、汗が多くなったり、逆に汗を全くかかなくなったりという異常が起きる場合があるのです。
糖尿病を背景とする汗は、
・甘酸っぱいにおいがする
・べたつきがある
といった特徴があるといわれていますが、すべての糖尿病の方に当てはまるわけではありません。
糖尿病の初期は自覚症状が出にくいといわれていますが、汗のかき方が急に変わるなどの変化を感じたときは、注意してみましょう。喉の渇き、倦怠感、目のかすみ、皮膚のかゆみ、頻尿なども、糖尿病のサインの1つです。
女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減るのに伴い、心身にさまざまな変化が起きる更年期。
40~50歳代の女性のうち、30~40%の人が更年期障害の可能性があるという結果があります。(※)
一方で、更年期症状を感じている人のうち、医療機関を受診していないケースも多く含まれます。
更年期の代表的な症状のひとつとして、のぼせ、ほてり(ホットフラッシュ)や発汗があります。汗については、とくに寝ているときに気になる方が多いようです。
更年期の年代に該当する女性で、汗が気になる方は、更年期障害の可能性も考慮していく必要があります。
更年期症状かもしれない、とお悩みの方は医療機関に相談し、必要に応じた治療を受けることで症状が改善する可能性が高いです。
当院では婦人科医師による更年期治療に対応しておりますので、ご相談のみの方もお気軽にご利用ください。
(※)厚生労働省(2022).「更年期症状・障害に関する意識調査」 基本集計結果
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汗の調節をする汗腺の働きは自律神経が担っています。自律神経は自分の意思とは関係なく、体内のバランスを保つためのさまざまな働きを支える神経です。
この自律神経のバランスが崩れてしまう状態を、自律神経失調症といいます。
症状は人によって多様で、その人の体の弱い部分に現れやすいといわれています。
汗の異常のほかにも、以下のような症状が出ていませんか?
・疲労感、倦怠感
・しびれ
・息切れ、動機
・めまい、頭痛
・不眠、寝汗
・食欲不振
・肩こり、背中や腰の痛み
・腹痛、下痢、便秘
自律神経失調症の原因ははっきりしないものの、ストレスや生活習慣の乱れが関係しているとされています。ご自身の生活に心当たりがないか、振り返ってみましょう。
体質的に汗をかきやすい人もいますが、生活に支障があるような量の汗が出ている場合、多汗症である可能性もあります。
日常生活に支障をきたすほど、大量の汗をかいてしまう状態であり、以下のような基準に当てはまると、多汗症である可能性が考えられます。
・25歳以下に発症している
・左右対象に汗が出る
・睡眠中は汗が止まる
・週1回以上、汗が気になる状態が続いている
・家族にも汗で悩む人がいる
・症状によって、日常生活に支障が出ている
※過剰な発汗が6か月以上続き、上記2項目以上が当てはまる場合
症状の重症度には段階があり、汗で湿っているレベルから、汗の水滴が滴り落ちるほどにもなります。
また、過剰な発汗を「周りから不快に思われているのではないか」と気にする毎日に精神的苦痛を抱くことも多いのです。
まず、発汗の背景に原因となる病気が隠れている場合を「続発性多汗症」、原因がはっきりわからない場合は「原発性多汗症」と分類されます。
続発性多汗症の場合は、原因となる疾患の治療に伴い、汗の量が減ってくる場合もあります。
一方、基礎疾患がない場合は、汗を出す汗腺が働き過ぎている状態といえるでしょう。
また、汗が多く出ている場所が全身なのか、体の一部分なのかによって全身性多汗症・局所性多汗症と分類され、治療薬の選択も変わります。
局所性多汗症で汗が多く出る部位は
・脇
・手のひら
・足の裏
・頭、顔
に分類され、複数の部位に症状が見られる場合もあります。
原因不明の大量の汗というと、不安に思われるかもしれませんが、原因がはっきりわからない場合も、汗を抑える薬があり、保険診療で治療が可能です。
汗が多い箇所が全身に及ぶ場合は飲み薬、手や脇など限定的な場合は塗り薬やシートタイプの薬など、症状が出ている場所に合わせて、医師と相談して適したものを選択していきます。
「汗が多いのは体質」と思われがちで、日常生活への支障があるにもかかわらず、治療されていない方が多いといわれています。
お悩みの症状が緩和する可能性もありますので、一度、医療機関への相談を検討してみてください。
当院では多汗症の診察・治療をオンライン診療で受けられます。オンライン診療なら、自宅など好きな場所で受診できますので、通院が不要なだけでなく、プライバシーもしっかり守られますよ。
ご自身でできる汗の対策もあります。どれも特別な対策ではありませんが、日々の習慣の積み重ねが、体内のバランスを作り出しているといえるかもしれません。
自律神経を整える上でも、バランスのよい食事を摂るのは大切です。また、汗をかくと、水分や塩分(ナトリウム)やマグネシウム、亜鉛、カリウム、ビタミン(B1、B2、B6、B12、C他)なども失われてしまいます。
汗対策に、特定の食べ物だけを食べるのは、栄養バランスの面から見るとむしろ逆効果となる場合があります。
丼ものや麺類のみなど、摂取する品目が少なくなりがちなメニューには、副菜をプラスするなどの工夫をぜひ取り入れてみましょう。
とくに辛いものや酸っぱいものは、発汗を促してしまいますので、汗を気にしているときには控えるようにしましょう。
また、コーヒーや緑茶など、カフェインを多く含む飲み物や、アルコール、タバコといった嗜好品も、交感神経を優位にしますので、摂り過ぎて自律神経の乱れにつながらないように気を付けましょう。
ストレスは自律神経に影響を与え、バランスを崩すきっかけにもなります。受けるストレスをゼロにするのは難しいですが、ご自身にとってストレス解消となるものを見つけ、ストレスとうまく付き合っていけるとよいですね。
また、ストレスの心身への影響は個人差がありますが、寝つきが悪くなるなど、睡眠への影響は出る方も多いようです。ついお酒などに頼っているという方は、一度医療機関に相談してみるとよいでしょう。
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汗が気になるからといって、運動や入浴を控える必要はありません。
むしろ、運動不足は多汗症を悪化させてしまう可能性もあります。運動して適度な汗をかくと、汗腺の機能を正常に保つのにつながりますよ。激しい運動は避け、ウォーキングなどの軽い運動から始めてみましょう。
また、入浴の際は熱過ぎるお湯を避け、肩までしっかりお湯につかるようにしましょう。時間をかけて半身浴をしたり、ひざ下と手をお湯につける手足浴もよいといわれています。
そして、ゆっくりと入浴すると、汗腺の機能によい影響が期待できるだけでなく、リラックスにもつながります。
汗をかきやすいのは、体質や生活習慣だけでなく、病気が関係している場合もあります。
ちょっと動くだけで汗が出るという方は、その背景をよく観察してみましょう。
また、生活習慣の工夫を取り入れ、汗対策をセルフで行うことも可能ですが、生活に支障をきたすほどの汗は多汗症と診断される場合もあり、薬で症状を緩和できます。
「汗が多いくらいで病院なんて…」と我慢せず、ぜひ一度、医療機関に相談してみてくださいね。
心地よい毎日を過ごすためにも、汗との上手な付き合い方を見つけていきましょう。
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参考文献
一般社団法人 日本臨床内科医会 わかりやすい病気のはなしシリーズ19 自律神経失調症
厚生労働省(2022).「更年期症状・障害に関する意識調査」 基本集計結果
日本皮膚科学会(2023). 原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023 年改訂版 日本皮膚科学会誌 133(2). 157-188.