生理中はチョコを食べたくなるけどダメなの?理由や対処法も解説
当記事は、一般社団法人健幸会 シンクヘルスクリニック 代表理事・院長 大村 美穂先生が監修いたしました。執筆は、ライター 前間弘美 (管理栄養士)が担当しました。
生理前や生理中にチョコや甘いものが欲しくなるという方は、とても多いです。
そんな時「体が必要としているサインだろう」と、ついついチョコや甘いものをたくさん食べるのは体のためになるのでしょうか?
今回は生理とチョコの関係について、理由や影響を解説いたします。チョコを食べたい時の対処法についてもお伝えするので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1 生理中や生理前にチョコが欲しくなる理由
1.1気持ちを落ち着かせたい
1.2鉄分の補給のため
1.3ホルモンの影響
2 生理中にチョコを食べると生理痛がひどくなるって本当?
2.1経血の量は増えるのか
3 チョコを食べたくなった時の対処法
3.1ココアを飲む
3.2ナッツやドライフルーツを食べる
4 まとめ
生理中や生理前になるとチョコを食べたくなる理由は、
・気持ちを落ち着せたい
・鉄分の補給
・ホルモンの影響
の3つが考えられます。
それぞれ詳しく解説しましょう。
チョコの原料であるカカオ豆には、テオブロミンという苦味成分が含まれます。
テオブロミンは神経伝達物質(※)であるセロトニンの生成を促し、リラックス効果が期待されています。
(※)神経細胞から他の細胞へ情報を伝える物質のこと
生理前や生理中にイライラしたり、気持ちが落ち込んでしまう場合、チョコを食べることでリラックス効果を得たいと感じているのかもしれません。
チョコには100gあたり2.4mgの鉄分が含まれます。一般的な板チョコは1枚50gなので、1枚あたりおおよそ1.2mgの鉄分を摂ることができれます。
厚生労働省の食事摂取基準によると、生理のある30代の女性に推奨される鉄分は1日に10.5mgです。生理がない場合の30代女性の1日に推奨される鉄分が6.5mgなので、生理があると鉄の推奨量が4mgも増えるとわかります。
チョコには鉄分が含まれるため、無意識のうちに鉄分を補給しようとしているのかもしれませんね。
生理周期にかかわるホルモンは、プロゲステロンとエストロゲンです。この2つは女性ホルモンと呼ばれ、生理後2週間程度はエストロゲン、生理前2週間~数日前はプロゲステロンの分泌が増えます。
そしてプロゲステロンには、食欲を増進させる働きがあるのです。
さらに生理開始数日前にはプロゲステロンの分泌減少に伴って、セロトニンの分泌も減るといわれています。セロトニンは、幸せホルモンとも呼ばれる神経伝達物質です。セロトニンには食欲を抑える働きがあるため、セロトニンが減少すると食欲は増すと考えられます。
つまり、生理前から生理中はプロゲステロンやセロトニンの影響で食欲が増し、カロリーの高いチョコを食べたくなる可能性があります。
とはいえ間食の摂りすぎは体調不良につながるので、適量にしましょう。板チョコでしたら、1日1/3枚が適量ですよ。
生理中にチョコを食べると、必ずしも生理痛がひどくなることはありません。
チョコが生理痛をひどくするという噂は、カフェインやチラミンという物質に関係します。カフェインやチラミンには交感神経(※)を優位にする働きがあります。交感神経が優位になると、子宮を収縮させるため生理痛がひどくなるといわれているのでしょう。
(※)頭や体を適度な緊張状態にする自律神経のこと
ただし実のところチョコには、カフェインやチラミンが多く含まれるわけではないのです。つまりチョコを食べたからといって、極端に生理痛がひどくなることはないと考えられます。
生理前や生理中にチョコを食べたからといって、経血の量が増えることはないでしょう。
なお、チョコを食べると1度に出る経血量が増えて生理が早く終わる、といった噂もあるようですが、いずれも医学的な根拠はありません。
生理を早く終わらせる方法はありませんが、クリニックなどの医療機関でピルを処方してもらうと生理の日程を調整することは可能です。旅行などの予定に合わせて生理の開始を調整したい時は、相談してみるのもよいでしょう。
生理中であっても、間食として適量のチョコを食べるのであれば問題ありません。
ただし生理周期に関係なく、チョコの食べすぎはカロリー・糖質の摂りすぎになるため、健康によい習慣とはいえないでしょう。
そこでチョコを食べたい時の代わりとして、
・ココアを飲む
・ナッツやドライフルーツを食べる
といった方法もおすすめです。
ホットココアには
・体を温める
・ストレスを低減させる
といった効果が期待できます。
ホットココアを飲んで体を温めると、生理痛を和らげて痛みの軽減につながることがあります。
さらにココアに含まれるカカオマスには、生理前や生理中のイライラや気持ちを落ち着かせる可能性も。動物を対象とした研究結果ですが、ストレスを与えたラットにカカオマスを摂取させると、精神的なストレス反応が抑えられたそうです。
生理前や生理中の間食として、ココアを1杯程度飲むと体も心もホッとできるかもしれませんね。
ナッツやドライフルーツは、ビタミン・ミネラル・食物繊維など生理中に摂りたい栄養成分がたくさん含まれます。
ビタミンやミネラルは血液の材料となるため、貧血の予防に役立ちます。
また食物繊維は水分と一緒に摂ることで、便秘の解消に効果的です。さらに食物繊維は腸内細菌のエサとなり、腸内環境を整える働きが期待できます。生理前や生理中には便秘になったり、お腹が緩くなったりする方に、ぴったりの栄養成分といえますね。
以上、生理前や生理中にチョコを食べたくなる理由として、
・気持ちを落ち着せたいから
・鉄分の補給のため
・ホルモンの影響
の3つを挙げました。
たとえチョコを食べたからといって、生理痛や経血量に影響はないと考えられます。とはいえカロリー・糖質や健康の面から、チョコの食べすぎはよくありません。板チョコを1日1/3程度に留めるか、ココアやナッツ、ドライフルーツを上手に取り入れるとよいでしょう。
それでは当記事を参考に、生理とチョコの関係について理解が深まるとうれしいです。
参考文献
公益社団法人 日本産婦人科医会 産科・婦人科の病気
公益社団法人 日本産婦人科学会 女性の健康Q&A
J-STAGE 禁忌食(その2)
製品評価技術基盤機構 チラミン
厚生労働省 「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 女性ホルモンとライフステージ
日本食品科学工学会誌 ココア摂取がヒト体表温に及ぼす影響