脂質異常症は放置しないで!合併症と予防・治療を医師が解説
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シンクヘルスクリニック 院長
岩佐美穂
資格(産婦人科専門医、日本抗加齢医学専門医、がん治療認定医)
所属学会(日本産科婦人科学会、日本成人病(生活習慣病)学会、日本抗加齢医学会、日本癌治療学会)
日本赤十字社医療センター、虎の門病院で産婦人科医として臨床経験を積む。「忙しく頑張っている人がもっと気楽に相談できる場所を作りたい」との想いを胸に、2024年11月、オンライン診療専門のシンクヘルスクリニックを開院。
内科、皮膚科、医療用漢方、婦人科など、受診者の悩みに幅広く対応。心のケアも大切に、一人ひとりが安心して自分の体と向き合えるようサポートしている。
目次
1 「数値が高い」先にあるもの
1.1 放置で何が起こる?
2 合併症を“見える化”
2.1 心・脳・足・腎のリスク
3 目標値の考え方
3.1 “人によってゴールが違う”
4 生活でできることの基本
4.1 食事:3つの置き換え
4.2 運動:週150分の中強度
4.3 禁煙・節酒
5 薬の役割
5.1 「生活+薬」が基本
5.2 主な薬のタイプ
6 モニタリングがカギ
6.1 検査・フォローの頻度
6.2 薬の副作用も定期採血で
7 受診・相談のタイミング
7.1 受診の目安
7.2 オンライン診療の活用
8 まとめ
健康診断でコレステロールや中性脂肪の数値を指摘されても、症状がないため放置していませんか?
脂質異常症は自覚症状がないまま進行し、心筋梗塞や脳梗塞といった深刻な病気につながる危険なサインです。
この記事では、脂質異常症のリスクやご自身に合った目標設定、治療法について、医師がポイントを絞って解説します。
| 「数値が高い」先にあるもの
脂質異常症とは、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)が基準から外れた状態です。
一般的には、
・HDL(善玉)コレステロールが低い
・中性脂肪が高い
といった状態を指します。
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| 放置で何が起こる?
数値が高い状態を放置すると、余分な脂質が血管の壁に溜まり「動脈硬化」が進みます。血管は硬く狭くなり、血流が悪化します。その結果、心臓や脳といった大きな血管の「動脈硬化」が進み、最終的には心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすのです。
恐ろしいのは、動脈硬化は痛みも違和感もないまま進むことです。症状が出た時には手遅れ、ということも少なくありません。
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| 合併症を“見える化”
動脈硬化が進行し、血流が悪くなったり血管が詰まったりすると、心臓や脳、腎臓に重大な合併症を引き起こします。
| 心・脳・足・腎のリスク

・心臓:心臓の血管(冠動脈)が詰まると狭心症や心筋梗塞となり、命に危険が及びかねません
・脳:脳の血管が詰まると脳梗塞を発症し、手足の麻痺や言語障害など重い後遺症が出ることがあります
・その他 足の血管が詰まると歩行時に痛みが出現し(閉塞性動脈硬化症)、腎臓の血管が硬くなると腎機能低下につながります
これらのリスクは、高血圧や糖尿病、喫煙習慣があると、相乗効果でさらに加速していくのです。
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| 目標値の考え方
「数値をどこまで下げれば安心なのか」という疑問を、多くの方が持ちます。
実は、脂質異常症の治療目標値はすべての人で同じではありません。
| “人によってゴールが違う”
目標設定で最も重視されるのは、LDL(悪玉)コレステロールの値です。
例えば、糖尿病がある方、慢性腎臓病(CKD)の方、そしてすでに心筋梗塞や脳梗塞を起こしたことがある方は、動脈硬化による病気のリスクが高い、高リスク群と判断され、より厳格な管理が必要になることがあります。
高リスク群の場合、LDLコレステロールの目標値は、通常よりずっと低い数値に設定されます。まずはご自身の正しいゴールを知ることが、治療の第一歩です。
| 生活でできることの基本
治療の基本は、まず「生活習慣の改善」です。
薬の前に、できることから始めましょう。
| 食事:3つの置き換え
・揚げ物 → 蒸す・焼くへ :飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を減らし、脂質の摂取量を抑えるため
・肉(脂身)→ 青魚へ :青魚に含まれるEPA・DHAは中性脂肪を下げ、動脈硬化を防ぐ働きが期待できます
また、野菜や海藻、きのこ類に多く含まれる食物繊維は、コレステロールの排出を助けてくれます。
| 運動:週150分の中強度

運動は、脂質代謝を改善します。「中強度(※)」の有酸素運動を、週に合計150分(例:1回30分を週5回)行うことが推奨されます。
(※)少しきついけれど、会話はなんとかできる程度の運動
早歩き(ウォーキング)・軽いジョギング・自転車など、継続しやすいものから始めましょう。
いきなり無理をする必要はありません。まずは1回10〜15分からでもよいので、続けられる形で始めることが大切です。
| 禁煙・節酒
禁煙と節酒も、脂質バランスの改善に重要です。特に喫煙は動脈硬化を強力に加速するため、禁煙は必須です。
また飲酒量が多いと中性脂肪が上がりやすくなるため、飲酒習慣がある方は量を見直しましょう。
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| 薬の役割
生活習慣を頑張っても数値が下がらない場合や高リスク群の場合は、薬による治療を検討します。
| 「生活+薬」が基本
薬物治療は、あくまで生活習慣の改善とセットで行うのが基本です。
「薬を始めたら一生やめられないのでは」と不安に思う方もいらっしゃいます。しかし、お薬は「足りない部分を補う道具」と考えてください。生活改善だけでは届かない目標値を達成し、動脈硬化のリスクを効率的に下げることが目的です。
なお自己判断で、薬を中断するのは最も危険です。薬をやめる、あるいは減らす判断は、必ず医師と相談しながら行いましょう。
| 主な薬のタイプ
・エゼチミブ:小腸でのコレステロール吸収を抑える薬
・フィブラート系:主に中性脂肪を下げる薬
・EPA/DHA製剤:青魚の油の成分で、主に中性脂肪を下げます
どの薬が適しているかは、LDLが高いのか、中性脂肪が高いのか、ほかの病気があるかによって異なります。
| モニタリングがカギ
脂質異常症の治療は、定期的な状態の確認(モニタリング)が非常に重要です。
| 検査・フォローの頻度
治療開始後は1〜3か月、数値が安定した後は3〜6か月に1回程度の血液検査で効果や安全性を確認することが多いでしょう。
| 薬の副作用も定期採血で
お薬を安全に使い続けるためにも、定期的な血液検査は欠かせません。
まれな副作用(筋肉痛や肝機能の変化など)も、早期に発見できます。違和感があれば、早めに医師に相談してください。
| 受診・相談のタイミング
くり返しになりますが、脂質異常症は自覚症状がないまま進行する病気です。
そのため、受診のタイミングを逃しがちです。
| 受診の目安

・「経過観察」だが、何をすべきか具体的に知りたい
・家族に心筋梗塞や脳梗塞の既往がある
このような方は、一度医療機関に相談することをおすすめします。
| オンライン診療の活用
脂質異常症は、継続的に数値を確認しながら治療していくことが大切です。
そのため、通院が負担になりやすい方では、オンライン診療を活用することも選択肢です。
当院では、検査結果を共有いただきながら、脂質異常症のご相談や継続治療に対応しています。忙しくて通院が難しい方も、まずはご相談ください。
オンライン診療が気になる方はこちらから
| まとめ
脂質異常症は自覚症状がなくても放置すると動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な病気につながることがあります。脂質異常症の管理は、ご自身の未来の健康を守るために非常に重要です。
ポイントは以下の3つです。
・「生活+薬」のバランス:基本は生活改善ですが、必要に応じて薬を上手に活用します
・結果は共有して一緒に改善を:定期的に検査を受け、医師と二人三脚で改善を目指しましょう
当院では、オンライン診療で皆様が無理なく治療を継続できる体制を整えています。ぜひお気軽にご相談ください。
参考文献
・厚生労働省 健康づくりサポートネット 「脂質異常症」「動脈硬化」
・一般社団法人 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
・国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「[循環器病情報サービス]「脂質異常症(高脂血症)」

